ニュースで、景気の回復、ベースアップ、消費者物価指数の上昇についてよく耳にするが、実際のところ給料が上がっている人は少数だろう。一体いつになったらぼくらの給料は上がるのだろうか? 32年ぶりの物価上昇を続ける日本で、サラリーマンが知っておくべき、資本主義の冷酷なルールとは?

 総務省は、6月27日、5月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)を発表しました。それによると、前年同月比3.4%上昇の103.4と、12ヵ月連続で上昇しました。エネルギー価格が上昇したことと合わせて、消費税率が8%に引き上げられた影響が加わったと分析されています。

 この物価上昇幅は、32年1ヵ月ぶりの大きさ。じつに第2次石油危機後の1982年以来です。

 一般的に考えると、物価は景気がよくなるにつれて、上がる傾向があります。そのため、この32年ぶりの物価上昇を「デフレ脱却に向けた前進」と評価する声もあります。

 しかし、当然のことながら物価が上がるだけで好景気になるわけではありません。「物価上昇→給料上昇→消費増加」とならなければ景気は上向いていきません。

 物価が上がる場合、給料も同時に上がらなければ実質賃金は下がります。3.5%も消費者物価が上がっていたら、消費者の購買力は減ります。

 厚生労働省の統計によると、1世帯当たりの平均可処分所得は約430万円です。単純計算すると、約15万円分、購買力が小さくなったことになります。月額1万円強です。こうなると、生活を苦しく感じる人が出てきますね。

 ここで関心が集まるのは、「物価が上がった分だけ、給料も上がるか」です。

『資本論』の理論で考えた場合、給料がどのように決まっているか、これまでの連載ですでに解説しました。そして、日本企業の給料の決まり方は、その資本論の理論が完全に合致していることも解説しました。

 改めて簡単に言うと、日本企業では給料は次のような考え方で決まっています。

 すなわち、「その労働者が明日も元気に働くために必要なコスト」を考え、その合計金額を給料として渡しているのです。

 食費、住居費、衣服、ストレス発散代など、明日も働いてもらうために必要なものの合算が給料なのです。

 そう考えると、物価が上がれば、その分給料も上がっていくことになります。ただ、給料は物価に連動して上がっていません。これはいったいどういうことでしょうか?