承認欲求を捨てよ

課長 なるほど、アドラーの考え方は確かに前向きになれます。もう一つ悩みがあるのですが……。聞いてください。

 実は今、部長と部下の間で板挟みになっているのです。当人同士でやってほしいですよ。

哲人 板挟みとは、どういうことですか?

課長 部長からはもっと部下を働かせろと言われ、部下からはこれ以上は働けないと、愚痴を言われている、という状態です。

哲人 あなた自身は、部下の仕事量をどう思っているのですか?

課長 少し働かせ過ぎかもしれない、と思っています。みんな夜遅くまで残業し、中には休日出勤している者さえ居ます。

哲人 では、なぜあなたの考えをそのまま部長に伝えないのですか?

課長 まあ、部長の意見にも一理ありますから。そこは調整しないと。

哲人 それはうそです。あなたのやっていることは調整ではなく、同調にすぎない。ではなぜ同調するのか。理由は一つ。あなたが他者から嫌われることを恐れているからです。

課長 痛いところを突きますね。確かにそうかもしれません。でも、誰だって嫌われたくない。人間には他者に認められたいという「承認欲求」があるんですから。

哲人 ここで断言しましょう。アドラー心理学では承認欲求を否定します。

課長 えっ。どういうことです?

哲人 他者から承認される必要はないということです。確かに、他者から承認されるのは、うれしいことでしょう。しかし勘違いしてはいけません。われわれは「他者から承認されるために生きているのではない」のです。他者の期待を満たすために生きる人生は、自分の人生とは呼べません。

課長 なんですって? ではどうすれば?