なぜアイツは僕をライバル視するのか?
自己高揚が好きなアメリカ人と嫌いな日本人

 今回は「自己高揚」と「自己卑下」という観点から、勝てないビジネスマンの「黒い心理学」を炙り出し、どうしたら勝てるようになるかを考えよう。

 筆者が社会学部の大学院生として米国のロサンゼルスに留学していたとき、同期にコロンビア大学の学部を卒業してきた「ニューヨーカー」の男の子がいた。彼は白人のイタリア系米国人だった。

 筆者が留学したのは20代後半だったため、彼は数歳年下だった。その彼はなぜか私をライバル視しており、特に数学を使う授業では、随分私の成績を気にしていた。後で聞くと、彼はずっと理数系が得意だったが、アジア系の学生は理数系では大抵白人より成績がいいので、当時の同期で唯一アジア系だった筆者に対して、「得意科目では負けない」と意気込んでいたのだった。

 彼とは統計学の授業で一緒だったのだが、いつも私より先に課題を解こうとし、私が先に正解を出すと、もっと難しい問題を解いてきて「どうだ!」と言わんばかりに私に見せ付けていた。

 私はそういう彼の態度に少し辟易していたが、その点を除けば、とても性格のいいやつだったので、適当にいなしていた。

 統計学の期末試験が終わり、成績が出たとき、私は担当の教授から「君がクラスでトップだったよ」と言われた。私にとっては意外だった。クラスでは彼が最も発言し、難しい問題もこなし、リーダーのような存在だったからだ。私自身、統計学は日本にいた頃にやってはいたが、あまり得意なほうではないと思っていたし、トップになりたいとも思っていなかった。

 なので、教授の言葉に最初私は驚いた。だが当然嬉さも感じたし、それは友人たちが「すごいね」と祝福してくれたときに、ますます大きくなった。

 一方、教授のその言葉を聞いていた彼は、憮然とした表情で教室を出て行った。私は知らなかったのだが、その後教授の部屋に行き、「自分の成績はもっと高いはずだ。ワタベに負けてはいないはずだ」と言って、成績の見直しを迫ったという。