田中将大(25)とともに同期入団で1年目から野村克也氏(78)の薫陶を受けた嶋基宏(29)。
ついに、2013年、球団創設9年目にして念願の日本一になった。
『野生の教育論』 で「楽天vs巨人」の日本シリーズを徹底解説したかつての恩師は、嶋の活躍をどう見ているのだろうか?
“無言の対話”ができるようになった嶋
楽天のキャッチャー、嶋基宏にはこれまでたびたび厳しいことを言ってきた。
近年はチームリーダーとしての自覚が大いに出てきたようだし、返球などを通じてピッチャーとの“無言の対話”もできるようになった。
私が監督だったころに較べれば、ずいぶんと成長したと思う。
配球においても、日本シリーズを見ていると、かなり内角を攻められるようになっている。
しかし、いまもピンチになると、「外角一辺倒」という悪いクセが顔を出すことがある。
これでは配球が単調になり、相手バッターに読まれやすくなってしまう。
なぜ、嶋は内角を攻められないのか?
新人時代の嶋は、どうしても内角を要求することができなかった。
「インコースに行け! インコースだ!」
当時コーチだった克則がベンチからどれだけ怒鳴っても、内角を攻めようとしなかった。
なぜなのか、嶋に直接訊ねたことがある。
第一の理由は、「ホームランが怖い」。
そして、もうひとつの理由として嶋があげたのが、「ぶつけるのが怖い」ということだった。
もしデッドボールを与えてしまうと、次に自分が打席に立ったときにぶつけ返される。それを恐れていたのである。
現役時代は私もよく狙われたものだが、むしろそうした仕返しを発奮材料にして闘志を沸き立たせたものだった。
そうでなければ、キャッチャーという仕事は務まらないのである。
はっきり言うが、嶋はハートが弱いのだ。ふと思いついて、嶋の中学時代の成績を調べさせたことがある。
驚いたことに、5段階でオール5だった。