ただし、現在のわが国の財政状況を分析すると、戦後の混乱期とは明らかに異なっている。財政状況は主要先進国の中で最も悪化しているとはいうものの、まだ財務当局のコントロールは効いている。すぐに預金封鎖などの事態に追い込まれることは考え難い。

 わが国の10年物国債の流通利回りは0.60%程度で、先進国の中で最も低い水準にある。その理由は2つの要因を考えるとわかり易い。1つは、日銀が大量の国債を購入していることだ。

当時と今とではどこが違うのか?
日銀が支える日本の財政と国債市場

 もともと日銀は定例的に国債を購入していたが、昨年4月の異次元の金融緩和策の実施によって購入額は一挙に拡大し、毎月7兆円程度の紙幣を印刷して多額の国債を購入している。日銀が国債を大量購入していることもあり、足もとのわが国の国債市場は一定の平穏を保っているのだ。

 もう1つの要因は、国内の個人金融資産だ。わが国の個人金融資産は1600兆円にも上る。その個人金融資産が、今まで国債消化の原資となってきた。個人が給与振り込みで銀行に100円でも預金を持った場合、一般的に銀行はその資金を貸し出しに回すものだが、景気の低迷が続いたこともあり、企業の資金需要が伸びずに資金が余ることが多かった。

 銀行は余った資金で国債を購入するケースが多く、結果として各個人が意識することなく、銀行への預金の一部が国債購入資金になっていたのである。そのため、国の借金の増加にもかかわらず、国債の市場が安定していたと言える。

 しかし、そうした状況を長期間続けることには無理がある。日銀の国債大量購入によって国債の売買高が減少し、市場の機能そのものが失われることが懸念される。その場合には、一般の投資家が国債市場から退出せざるを得ない。

 また、国債の大量購入によって日銀のバランスシートが拡大し、日銀の信用力が低下することも考えられる。日銀の信用力が低下すると、日銀が発行する紙幣の信用力が落ちてインフレが高進することも想定される。