小泉郵政民営化を否定し、その見直しを掲げてきた鳩山由紀夫首班の民主、社民、国民新3党連立政権が16日、発足した。取材を進めると、新政権はすでに、その居座り容認が自民党政権崩壊の駄目押しとなった日本郵政の西川善文社長の事実上の更迭と、早期の上場を目指していた日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命3社の株式売却の凍結に関する法案の臨時国会への提出を既定路線として固めている。

 本稿執筆段階(17日午前)における政権の関心は、持ち株会社日本郵政の下に郵便局、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の4事業会社を置く「4事業会社体制」の具体的な見直し策作りに移っており、収益力の弱い郵便局と日本郵便を持ち株会社の日本郵政に合併させる「3社合併案」が有力候補として浮上しているという。

 「郵政は国民共有の財産であるという認識のない経営者に、これ以上(社長の職を)委ねるわけにはいかない」。

 「一部の人間だけが得をする民営化にならないよう、ガバナンス(企業統治)が効くようにしたい」。

 日本郵政の西川善文社長の更迭問題について、原口一博総務大臣は17日未明の初閣議後の記者会見で、何ら戸惑うことなく断言した。総選挙後、西川氏を退任させる考えに「変化はない」と発言してきた鳩山首相や、前々日の国民新党本部での記者会見で「生首を切るようなことはしたくない」「新しい経営者に委ねる判断を(自ら)されたらいい」と心情を披露していた亀井静香郵政問題・金融担当大臣と足並みを揃えた発言だった。

事実上の更迭はもちろん、
法的責任を追及する声も

 もはや西川氏に選択肢は残っていない。現職の所管大臣を辞任に追い込み、麻生太郎政権の存立を揺るがすことすら厭わず、日本郵政社長の地位にしがみついてきたが、その命脈は尽きたと言わざるを得ない。新政権の内部では、万が一、西川氏が辞任を拒否したとしても、その場合は、発行済みの日本郵政株の100%すべてを保有する株主として、速やかに臨時株主総会を招集して、解任決議を行い、西川氏の取締役資格をはく奪することでも一致をみているという。

 あわせて、「高木祥吉副社長、牛尾治朗社外取締役(ウシオ電機会長)、奥谷禮子社外取締役(ザ・アール代表取締役社長)らの連帯責任も問うのが新政権のコンセンサス」(長谷川憲正国民新党副幹事長)としている。

 今年初めに「かんぽの宿」の叩き売り問題が発覚して以来、次々と不透明な経営の実態が明らかにされ、当時は野党だったとはいえ、民主、社民、国民新の3党の共同で刑事告発まで受けながら、頑として自ら経営責任をとろうとしなかった西川社長だが、その事実上の更迭はもはや動かし難いものとなっているわけだ。

 ただ、新政権には、単に更迭だけでなく、様々な形で、西川氏の不透明な経営姿勢や居座りに伴う業務の滞りなどについても、法的責任を追及すべきだとの声があり、その是非についても検討しているという。