求められるイノベーションのスピードに
「日本ブランド」は追いつけるか

 世界有数の航空機メーカー、ボーイング社のマックナーニCEOは、最近折に触れ「もっとアップルのようになりたい」と周囲に漏らしているらしい。その真意はどこにあるのか。

 航空機業界と言えば、重厚長大産業の筆頭であり、そのイノベーションのサイクルは30~40年と考えられてきた。しかし、そのサイクルで次世代航空機を開発するだけでは、これからの経営は立ち行かない。まさしくアップルがiPhoneやiPadで成し遂げたように、今や航空機メーカーにさえ、技術イノベーションを顧客価値へ変換することを、スピード感を持って実行することが問われているのである。マックナーニCEOのつぶやきは、まさに国境も業界も越え、あらゆる企業にイノベーションの進化とスピードアップが求められていることの証左に他ならない。それは言うまでもなく「日本ブランド」にとっても最重要課題である。

 一方で、インターネットの普及を背景に、かつては大企業が社内研究を基盤として専有してきた技術やイノベーションに関する情報力の優位性がなくなりつつある。情報力という大きな参入障壁がなくなったことで、どのような業界でも新規や他業界からの参入が容易になった。たとえヒット商品を生みだしても、直ぐに誰かが似たようなモノ、さらにはもっと良いモノを創り出すことが可能な時代であると言えよう。知識・情報の流れが加速するのと同じ速度で競合が現れ、競争が激化することで、新製品は瞬時に輝きを失い、コモディティ化されていく。

 こうして製品ライフサイクルは短くなり、企業は、息つく暇もなく次々と新しい価値を創造しなければならないプレッシャーにさらされている。このことは、企業内部のリソースだけで取り組む従来の開発アプローチの限界を示している。時間とコストが追いつかないのだ。

自社リソースの限界の先へ挑む、
共創型の価値創造という新発想

 そこで発展してきたのが、社内リソースだけに頼らず外部の協力を得て、イノベーションを模索する共創型の価値創造アプローチである。情報力という参入障壁が消滅した今、逆にインターネット等、オープンコミュニケーションの場を活かしてイノベーションを進化させていく狙いである。開発プロセスをオープンにし、エンドユーザーや異業種企業など、社内外を問わず広く技術やアイデアを集めて、新しい価値を創り出していこうという動きは、既に世界のあらゆる業種に広がっている。

 P&Gはオープンイノベーションを仕組み化した「コネクト+デベロップ」を、重要な経営戦略のひとつに位置づけ、個人から大企業、研究機関まで多岐にわたるパートナーと、製品技術やパッケージ、ビジネスモデルなどの幅広い領域で様々なイノベーションを生み出している。Xeroxは、クラウドソーシングを活用することで、長年社内で解決できなかった技術的課題を、従来の10分の1のコストで解決できた。