「電撃戦」の核心とは

 電撃戦の核心とは、保有するすべての戦車を集めた装甲師団のほぼ全力を戦略的な要点に集中投下し、敵に対応する余裕を与えないまま、迅速に作戦を遂行し、作戦の目標を達成することにある。

 下の図は、ドイツ装甲師団を例にした電撃戦の概念図である。

電撃戦とは

 戦車を中核とした部隊が先陣を切り、それに装甲車両やオートバイで機械化された部隊が随伴する。トラックに乗り自動車化された歩兵が続き、迅速に部隊を展開する。こうした機械化が1つのイノベーションである。

 その結果、指揮命令においてもイノベーションがなされた。少なくとも当時の常識では、司令官は後方から各種情報を総合して指揮を執るのが通例だったが、電撃戦においては、師団長自らも指揮車に乗り、前線で指揮を執った。グデーリアンの工夫は、単に機械化するだけでなく、通信機器を効果的に使用した点にも表れている。

 第1次世界大戦で無線技術を取得していた彼は、戦車内部と通話できる通信装置を戦車の後方に設置した。これにより、ハッチを開けて危険に身をさらしながら意思疎通を図る必要はなくなった。ところが、フランス軍はこうした配慮がなされておらず、実戦において甚だしい困難に直面することになる。

 電撃戦では敵の一点を突破し、その背後に回り込み、挟撃して殲滅する戦法だが、その露払いとして、強力な火力が敵陣地を襲う。後方からの砲兵射撃が行われ、急降下爆撃機による地上部隊の掩護がなされる。時には空挺部隊(ドイツ軍では降下猟兵)が敵の要塞陣地に降り立ち、火砲やトーチカを破壊する。このような空陸一体作戦がもう1つのイノベーションである。

ロンメル将軍

 西部戦線では、森林と湿地で囲まれたルクセンブルク北部からベルギー南部にかけて広がるアルデンヌ地方を、主力である装甲部隊が突き進んだ。少なくともフランス軍首脳は、このような悪条件の地域を戦車や自動車が進撃してくるとは想定していなかった。その虚を突く形で、ゲルト・フォン・ルントシュテット指揮下のドイツ軍A軍集団がここを突破した。このA軍集団には、グデーリアンはもとより、のちに北アフリカ戦線で名を馳せるロンメルもいた。
ルントシュテットとロンメルは、その4年後のDデイを、ともに元帥としてフランスの地で迎えることになるとは、その時には想像だにしなかっただろう。

 フランス国境を越えたドイツ軍装甲部隊は、英仏連合軍を北海沿岸に追い詰めて行った。フランス最北の港町であるダンケルクから、大陸派遣イギリス軍を中心に奇跡の脱出劇が繰り広げられる。それが「ダイナモ作戦」であり、この日から4年間、イギリスは大陸反攻の機会を臥薪嘗胆、待ち続けるのだった。(つづく)
 

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