犯罪行為も少しずつ激化していった。街のルールを理解せずに、みんないいカモだと思っていた。手を出してはならない特別な人種がいるなんて知らなかった。

 俺は安アパートに住んでいたが、同じ建物に住んでいるみんなから盗んだ。誰も俺が泥棒だとは気づいていない。何人かはおふくろの友達だった。彼女たちは生活保護手当の小切手を換金して酒を買い、おふくろのところへ来て酒を飲んで遊んでいった。俺は自分の部屋から非常階段を上ってほかの部屋に忍び込み、手当たり次第に物を盗んだ。あるとき、部屋に帰って盗難に気づいたそこの奥さんが、走って、おふくろのところへ戻ってきて、「ローナ、ローナ、みんな持っていかれちゃった。ベビーフードまで!」

 彼女たちが帰ると、おふくろが俺の部屋に入ってきた。

「お見通しだよ。お前なんだろ?」

「俺じゃないよ、母ちゃん。ほら見てくれ」と、俺は言った。盗んだものは屋根の上に隠していたんだ。

「俺はずっとこの部屋にいたよ」

「いや、お前は正真正銘の盗っ人だ。私は生まれてから人様の物に手をつけたことは一度だってないのに。いったい誰に似たんだろうね」

 なんてこった。自分の母親からこんなことを言われるなんて、信じられるか? 家族は俺に絶望していたんだ。俺は犯罪者の人生へまっしぐらと、みんなが思っていた。姉貴はしょっちゅう俺に、「飛べない鳥はどんな鳥? 答えは囚人(ジェイルバード)! 囚人よ!」と言っていた。

 悪い噂が立ち、近所の人々は俺を毛嫌いし始めた。

 それでも、悪行は止まらなかった。チェーンをつかんで持ち主を階段から引きずり落としても平気だった。かまうもんか。俺にはこのチェーンが必要なんだ。情けをかける必要がどこにある? 俺は誰からも情けをかけてもらったことなんてない。

 いつか殺されるかもしれない。別にかまわなかった。どのみち16歳まで生きられるとは思っていなかった。不良どもからは勇敢な男として尊敬されるようになった。もちろん、こんなのは本当の勇気じゃない。ただ頭のネジが外れていただけだ。それは自分でもわかっていた。

 俺の知っているやつらはみんな悪事に手を染めていた。仕事を持っているやつらでも、陰では不正な手口で稼いでいた。麻薬を売ったり、盗みをはたらいたり。善人ぶっていたら誰からも声がかからない。堅物のレッテルを貼られてしまうんだ。悪事をはたらいていれば安泰だった。誰かがちょっかいを出し、喧嘩をふっかけてくる。そうやって、使えるやつかどうか確かめるんだ。だがそんな悪党もみんな俺の名前には恐れをなしていた。