彼女からの答えは「いや、それよりも『この相手の言っていることを知りたい』『理解したい』という一心でした。自分のことを振り返っている余裕なんてありませんでしたね」というものだった。

 英語のできない上司(と昔の筆者)は、英語教材に向き合わないで、英語をできない自分を何とかごまかすことにエネルギーを注いでいた。それに対して、彼女は英語そのものに向き合っていた。結果として、それが彼女の英語力を上げたのだ。

 また、彼女はそれを楽しんでいた。当初聴いてもわからなかった英語が理解できると、嬉しくて仕方なかったという。大切なのは、彼女は「理解できるようになった自分」が嬉しかったのではないことだ。話す相手の内容そのものを理解し、その内容について知識を得ることができ、知的好奇心を刺激されたことが嬉しかったのだ。

ダメな自分から理想の自分へと
進んで行く距離を楽しめ

 そう、グローバル時代に英語ができなくて悩んでいるビジネスパーソンがやるべきことは、簡単だ。自分の興味を惹く教材を探し、時間を捻出して、集中して、だが楽しみながら勉強と練習をする。それだけである。しかし最も重要なのは、それができないとき、「自分の心の何がそれを妨げているのか」を冷静に分析する目だ。

 読者諸氏も、失敗する自分を受け入れるのが怖いばかりに、英語から逃げていないか自己チェックしてみるとよい。

 もちろん、英語だけではない、重要なのに手を付けていない仕事、上司に報告すべきなのに隠蔽している失敗、家族との会話など、自分が避けているものを洗い直すことで、色々と変えていくことができるはずだ。

「自分は、本当は凄いはずだ」という自分の理想自己と、現在の自分との距離を知ってしまうことは、精神的に大きな苦痛とストレスをもたらす。しかしその後に、「ダメダメな自分」と、勉強や訓練のお蔭で「ちょっとだけ理想自己に近づいた自分」との距離を楽しめるようになれるはずだ。

 そしてそれこそが、自分の「理想的な自己」を手に入れ、「勝てないビジネスパーソン」から抜け出すための一番の近道ではないかと、筆者は考えている。