人を分類し、わかったつもりになることが、かえって想像力を奪っていく――。新刊『リーダーシップの科学』を上梓した神戸大・鈴木竜太教授は、リーダーに求められる想像力の源泉を「人間理解」ではなく、目の前の相手を理解しようとし続ける「他者理解」にあると語る。本稿では、ヤフーの人事担当役員を歴任し、『増補改訂版 ヤフーの1on1』の著者でもある本間浩輔氏との対話から、リーダーが立つべき「理解のスタンス」を考える。
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「わかったつもり」が一番あぶない
――「よいリーダー」がもつ想像力の源泉って、どういうところにあると思いますか。
鈴木竜太(以下、鈴木):人を理解するということだと思います。なかなか難しいんだけど、特に人間や人間社会について知ろうとしているかどうか、という点だと思います。
もっと近いところだと、フォロワーである部下のことをよく知ることです。「こんな人もいる、あんな人もいる」みたいなことが分かればいい。ただ難しいのは、理解すればするほど、その中のどれかっていうふうに類型化してしまいがちになりますよね。
――「前にもこんな人がいた」は通用しない?
鈴木:たとえば、「人間には2種類しかいない」って考える人と、「いや、そうじゃない。本当は20種類ぐらいである」と考える人がいたとします。確かに「人間には2種類しかいない」って考える人よりも精度は高くなるんだけど、実はよくないですよね。だって、本当は一人ひとり違うんだから。
だから、理解が進むってことと同時に「常に理解しようとするような試み」が大切です。「この人はこれまでの人と全く違う人かもしれない」と常に考えられるかどうか。そういうまなざしが消えてしまうと、非常に機械的なリーダーシップになってしまうことがあるかなと。
人間理解に「絶対の法則」はない
――「想像力」はどのようにして養われると思いますか。
鈴木:やはり「人間に対する理解」ですよね。本を読むのでもいいだろうし、1on1もすごく大事だと思います。よく本間さんも書かれているけど、「こちらの言いたいことを理解してもらう」っていう方向で1on1をしてしまうと、相手がどのような人かが一向に分からないまま終わってしまう。
それは私の理屈でいうと、「よいリーダーシップ」へは繋がらなくなる。「伝える」よりも「ちゃんと聞く」とかっていう方がむしろ大事というか、「相手から情報を取ってくるっていう方が大事だよ」っていうことは本間さんも言ってるもんね。
本間浩輔(以下、本間):結局、人間理解に「絶対の法則」なんてない。映画を観たって、誰かと喋ったって、小説を読んだって、「これをやれば絶対うまくいく」みたいなことはない。なぜなら人間だから。たとえば人間を理解するために小説読んだとして、読んだら読んだで枠にはまった考え方になるかもしれない。だから、究極的には人間を理解するのは無理。そういった前提がありつつ、新たなものを想像していかないといけないと思います。
ひとつの方法論として「1on1」があって、「この人はこういうこと考えている」って頭に入れていく。そういう経験をしながら、時に知識を入れたり吸収したりしながらやるべき。それに、1on1では自分の行動に対するレスポンスを拾うことができる。
たとえば僕が部下に「こういうふうにやってほしいんだよね」と依頼したにもかかわらずその通りに動かなければ、「あれどうだった?」「なんでそうなったの?」って確認することで、自分の指示の仕方についてフィードバックをもらえるんです。それを取り入れながら自分自身をチューニングしていく。だから、「人間理解」においては「1on1」を活用できるなと思う。
鈴木:なので、「人間理解」といよりは「他者理解」の方が正解だと思う。「他者を理解する」っていうことだね。


