5月29日、ジーンズ大手「エドウイン」が、事業再生ADR手続が成立した、と発表した。この事業再生ADRは今後非常に有望視されている私的整理の手段である。そこで、今後、中堅中小企業の経営者が必ず知っておくべき事業再生の各種制度を比較し、特に事業再生ADRの今後の展望を考察してみる。事業再生ADRがより有効性を高めるには、全会一致が必要だった債権者決議を多数決に変えることが有効だ。
産業の新陳代謝を
進めるために
平成26(2014)年5月29日、ジーンズ大手「エドウイン」がプレス発表をした。
「本日開催された債権者会議にて、全てのお取引金融機関からご同意をいただいて、事業再生ADR手続が成立いたしました。弊社は、伊藤忠商事グループからの出資を得て、伊藤忠商事株式会社の子会社となり、再出発を果たすこととなります」
報道によると、エドウインは約230億円の債権放棄を受けるとともに、伊藤忠が出資や貸し付けなどで300億円超の支援をするという。
「債権放棄」、「事業再生」、「再出発」……、といったフレーズから、エドウインは大変な経営危機にある、と印象を持った人も多いのではないか。しかしながら、実際はエドウインのジーンズの人気は衰えておらず、本業は堅調であるという。今回の事業再生ADRの利用は、デリバティブ(金融派生商品)の取引失敗で生じた巨額の損失及びそれを主原因とした多額の借入を整理するためだったようだ。
今後日本で産業の新陳代謝を進めるためには、裁判所を通した民事再生法などの「法的整理」とは別に、裁判所を通さない「私的整理」がもっと活用されなければならないことは明らかだ。特に、エドウインが使った事業再生ADRは今後非常に有望視されている私的整理の手段である。今回は、やや専門的な分野に踏み込むことになるが、今後、中堅中小企業の経営者が必ず知っておくべき事業再生の各種制度を比較し、特に事業再生ADRの今後の展望を考察してみる。