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富士通、NEC、日立がグローバル競争で勝つには
――直近決算に見る国内IT大手の現状と課題

松岡 功 [ITジャーナリスト]
【第57回】 2014年8月12日
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国内3社に求められる
ソフトウェア事業の強化

 こうして3社の直近四半期の業績を見ると、各社ともB2BのIT事業については、前年度から引き続いて回復基調にあるようだ。通期見通しでも、各社とも受注状況が堅調に推移していることから増収増益を見込む。とりわけ、営業利益の回復に大きな期待を寄せている。

 ただし、この3社は国内大手にとどまらず、グローバルで競合と渡り合えるようにならないと、これらの大きな成長は見込めない。個々の事業ではそれぞれにグローバルで存在感を発揮している領域もあるが、B2BのIT事業全体からすると、3社ともさらに強いプレゼンスを打ち出していく必要がある。

 では、国内3社はなぜグローバルで存在感を高められないのか。決算から見る事業構造に、その大きな要因が潜んでいるのではないかと筆者は考える。それは、B2BのIT事業分野でグローバルな競合大手と比較するとわかりやすい。

 まず、上記の決算内容から売上高利益率に注目したい。国内3社の2014年度第1四半期における売上高営業利益率は、富士通で1.6%、NECで1.3%、日立で0.9%と低水準にとどまっている。通期見通しでは、富士通が7.2%、NECが4.5%、日立が7.0%とだいぶ回復する予想だが、それでも1ケタ台だ。

 一方、グローバルな競合大手の直近の四半期決算を見ると、売上高純利益率という観点でも、米IBMで17.0%(2014年4~6月)、米マイクロソフトで19.7%(同)、米オラクルで32.2%(2014年3~5月)と高水準で、国内3社との違いが一目瞭然である。

 事業構造が異なるとの見方もあろう。例えばマイクロソフトやオラクルはソフトウェア事業が主体なので、比較対象にならないと思われるかもしれない。だが、そこがミソではないだろうか。むしろ国内3社のウィークポイントは、ソフトウェア事業の力不足にあるのではなかろうか。

 ソフトウェアは、一昔前まではハードウェアの付属品のように扱われていたが、今ではOSやミドルウェアがITプラットフォームとなり、アプリケーションが企業のビジネスを支える役目を果たしている。

 クラウドサービスにおけるPaaS(Platform as a Service)やSaaS(Software as a Service)といったネット上のITサービス事業も、その延長線上にあると捉えることができる。つまり、ベンダーにとってはソフトウェアがB2BのIT事業の中核を担っているのである。

 そうしたB2BのIT事業における位置付けもさることながら、ソフトウェアがベンダーにとって非常に重要な存在になっているのは、ビジネスモデルとして最も収益を生み出すからだ。先に示したマイクロソフトやオラクルの利益率がそれを如実に表している。さらにIBMの収益力の強さも実はソフトウェア事業にある。同社のソフトウェア事業の売上高は全体の売上高の3分の1程度を占めているが、利益に寄与する割合はさらに大きいと見られている。

 国内3社がこうした競合と渡り合うには、やはりソフトウェア事業を強化する必要があるだろう。その意味では、B2BのIT市場に今後大きな変化をもたらすであろうクラウド時代の到来を絶好のチャンスと捉えるべきである。

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松岡 功
[ITジャーナリスト]

まつおか・いさお ITジャーナリストとして複数のメディアにコラムや解説記事を執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などで記者およびIT系月刊誌の編集長を歴任後、フリーに。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。

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