COUNTER ASSAULTPhoto:PIXTA

クマによる人身被害が拡大する中、「クマ撃退スプレー」が一般にも知られるようになった。ところがこの機に便乗したスプレーの“ニセモノ”が氾濫している。由々しき事態に、「正しい知識を読者に伝えたい」とクマの専門家。「効果のあるスプレー」と「正しい使い方」を教えてもらった。(ダイヤモンド・ライフ編集部)

絶対に買ってはいけないクマスプレーは?
「正しいクマ対策」をスペシャリストが解説

『クマに9回襲われて生還した専門家が警告する、首都圏「クマ出没」要注意エリア』では、首都圏で今後「クマ出没」が懸念されるエリアの実名を、日本ツキノワグマ研究所所長の米田一彦氏に聞いた。米田氏はクマの観察や追跡調査を行う際、遭遇・捕獲したクマに9回襲われ、そのたびに生還した稀有な経験を持つ。有効なクマ対策について身をもって知る、まさにスペシャリストだ。

 なぜ米田氏は、クマに襲われても生還できたのか?実は、9回襲われたうち3回目~6回目は「クマ撃退スプレー」のおかげで助かったという。「スプレーを噴射していなければ死んでいた。生きていても重体だっただろう」と振り返る(詳細は後述の【私がツキノワグマに9回襲われた状況】を参照)。まさに、命を救ったアイテムなのだ。

 クマ撃退スプレーとは、トウガラシ由来の成分であるカプサイシンを含んでおり、クマの目や鼻などの粘膜に噴きかけると激痛を感じるものだ。以前は登山用品店を中心に販売していたが、今ではネット通販やホームセンター、アウトドアグッズを売る店などでも販売されている。クマ対策に効果的で、一般市民も購入しやすい。

 ところが今、スプレーの「ニセモノ」が出回っている。本来の用途は「対人用の催涙スプレー」にもかかわらず、このクマ被害拡大に機に便乗して、「クマスプレー」と銘打って販売する事例が急増しているのだ。

 クマ撃退用につくられていないスプレーを間違えて購入した人が、万が一クマに遭遇してスプレーを噴射しても、クマを撃退する効果はない。人命を危険にさらしかねない状況を、専門家も危惧している。

 そこで米田氏に、「本当に有効なスプレー」は何かを尋ねた。米田氏は、2本のスプレーを使い分けているという。合わせて、「正しい使い方」「注意点」も聞いた。また、スプレー以外の有効なクマ対策は何か。そもそもクマに遭遇しないためにはどうしたらいいか、予防策も教えてもらった。