芸能リポーター歴28年の井上公造による、10万人の取材で得た“28”の心理術をレクチャーする初のビジネス書『一瞬で「本音」を聞き出す技術』。この本が生まれたきっかけは大人気予備校講師・林修とのテレビ番組での共演があったから。2人の「本音」対談を、お届けします。(取材・構成/蓮池由美子 撮影/熊谷章)

聞き手をその気にさせる“つかみ”とは

林修が伝えたい<br />「生きた人間とつながりのある毎日を送る」必要性<br />【林修×井上公造対談】(後編)<br />井上公造(いのうえ・こうぞう)1956年、福岡市生まれ。西南学院大学商学部卒業。食品メーカーの会社員、フリーライター、新聞記者などを経験し、1986年に芸能リポーターに転身。株式会社KOZOクリエイターズを運営し、芸能リポーターのリーダーとして、芸能ジャーナリズムで幅広く活躍する。 現在は、日本テレビ「スッキリ!!」、フジテレビ「ワイドナショー」、読売テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」、「あさパラ! 」、「上沼・高田のクギズケ! 」、朝日放送「おはよう朝日です」、「キャスト」、関西テレビ「お笑いワイドショー マルコポロリ! 」、中京テレビ「キャッチ! 」、RKB毎日放送「今日感テレビ」などにレギュラー出演中。 編集長を務める公式モバイルサイト「井上公造芸能」では、ホットな芸能ニュースを毎日配信している。

井上 先生の本職である「生徒に教える」という作業、僕ら芸能リポーターが「テレビで伝える」という作業とすごく似ている気がするんですよ。

 似ていますね。最初にテレビ番組に呼ばれたとき、20年培ってきたスキルが生きる場なんじゃないかと感じたんですよ。これが「先生、新体操をやってくれませんか?」だったらそれは無理な話ですよね(笑)。テレビってなかなか出られるものじゃないし、それを「出てくれ」とお願いされたら、そこはもうノッてみるしかない。ダメならダメで烙印を押されても、自分の本業には何も傷つかないし、やれるだけのことをやってみようと思ったんです。

井上 授業でもテレビでもそうですが、聞き手をその気にさせるテクニックというか……。どんなに素晴らしい情報や授業でも、聞き手が興味なければまったく頭に入らない。どちらも、よくお笑いの人が言う“つかみ”が大切なんだと思うんです。人とのコミュニケーション全般にいえることですが、どんなシチュエーションでも“つかみ”はでかい!
 

 おっしゃるとおり! そこは僕も同じで、授業でも“つかみ”の部分はしっかりと準備して臨みます。実は、僕の番組が決まり、「仮面ライダー鎧武(ガイム)」(テレビ朝日系)が放送休止になるって、ガイムファンが僕に怒っているんですよ。「今39話まできていて、明日40話というところで、ものすごい盛り上がっているのに、林の野郎!」と(笑)。

 もちろん、ファンの気持ちもわかります。そこで僕は、この対談の前にしてきた講義で、一連の流れを説明して、「今日はこれから、ガイムファンにブログでお詫びを書かなくちゃならない」という話でしっかりと笑いを取って、生徒の心をつかんできました。

 僕が所属する東進ハイスクールでは、ネットを通じた授業があり、生徒と直接会わないこともある。「目の前にいない人にも伝えていく授業をしていたからこそ、人前で話す技が磨かれて、テレビでもスムーズに対応できるのかな?」そう思うこともあります。

井上 要はアイドリングなんですよね。相手を温めることが大事。そうすることで、相手もちゃんと“聞く態勢”に変わるから。バラエティ番組の前説もそうですけど、前説のうまい芸人さんたちは、ドンドン売れていくという法則があるんですよ。今から15、6年前に、関西で出演していた番組があって、スタジオに僕らが入っていくと、もうめちゃめちゃ温まってるんですよ。「いったい、前説は誰がやっているの?」と調べたら、当時はまだ無名のブラックマヨネーズだったんです。