芸能リポーター歴28年の井上公造による、10万人の取材で得た“28”の心理術をレクチャーする初のビジネス書『一瞬で「本音」を聞き出す技術』。この本が生まれたきっかけは大人気予備校講師・林修とのテレビ番組での共演があったから。2人の「本音」対談を、お届けします。(取材・構成/蓮池由美子 撮影/熊谷章)
聞き手をその気にさせる“つかみ”とは
井上 先生の本職である「生徒に教える」という作業、僕ら芸能リポーターが「テレビで伝える」という作業とすごく似ている気がするんですよ。
林 似ていますね。最初にテレビ番組に呼ばれたとき、20年培ってきたスキルが生きる場なんじゃないかと感じたんですよ。これが「先生、新体操をやってくれませんか?」だったらそれは無理な話ですよね(笑)。テレビってなかなか出られるものじゃないし、それを「出てくれ」とお願いされたら、そこはもうノッてみるしかない。ダメならダメで烙印を押されても、自分の本業には何も傷つかないし、やれるだけのことをやってみようと思ったんです。
井上 授業でもテレビでもそうですが、聞き手をその気にさせるテクニックというか……。どんなに素晴らしい情報や授業でも、聞き手が興味なければまったく頭に入らない。どちらも、よくお笑いの人が言う“つかみ”が大切なんだと思うんです。人とのコミュニケーション全般にいえることですが、どんなシチュエーションでも“つかみ”はでかい!
林 おっしゃるとおり! そこは僕も同じで、授業でも“つかみ”の部分はしっかりと準備して臨みます。実は、僕の番組が決まり、「仮面ライダー鎧武(ガイム)」(テレビ朝日系)が放送休止になるって、ガイムファンが僕に怒っているんですよ。「今39話まできていて、明日40話というところで、ものすごい盛り上がっているのに、林の野郎!」と(笑)。
もちろん、ファンの気持ちもわかります。そこで僕は、この対談の前にしてきた講義で、一連の流れを説明して、「今日はこれから、ガイムファンにブログでお詫びを書かなくちゃならない」という話でしっかりと笑いを取って、生徒の心をつかんできました。
僕が所属する東進ハイスクールでは、ネットを通じた授業があり、生徒と直接会わないこともある。「目の前にいない人にも伝えていく授業をしていたからこそ、人前で話す技が磨かれて、テレビでもスムーズに対応できるのかな?」そう思うこともあります。
井上 要はアイドリングなんですよね。相手を温めることが大事。そうすることで、相手もちゃんと“聞く態勢”に変わるから。バラエティ番組の前説もそうですけど、前説のうまい芸人さんたちは、ドンドン売れていくという法則があるんですよ。今から15、6年前に、関西で出演していた番組があって、スタジオに僕らが入っていくと、もうめちゃめちゃ温まってるんですよ。「いったい、前説は誰がやっているの?」と調べたら、当時はまだ無名のブラックマヨネーズだったんです。