林 やっぱり、そういうところで差がつくんですよね。「これをチャンスだ!」と思ってやれるタイプと、やれないタイプと。むしろ前説で冷やされて、冷蔵庫から始まるなんて状況もありそうですよね(笑)。
井上 ギャラが出ない前説の仕事でも、それでも芸人の意地を見せて笑わせる――これが大事なんでしょうね。
林 毎回、前説で同じネタをやられる芸人さんもいますよね。プロデューサーやたくさんの方が見ているチャンスの場で、もしも僕があの立場だったら、あの手この手で「どう笑わせてやろうか」と必死に考えると思う。
予備校講師の例で挙げるとするならば、僕は質問ゼロの授業を目指しているんです。授業で生徒から質問が出たら、じゃあどう説明したらこれがわかるのかを再構築する。だから、次の授業で同じような質問を受ける先生は、言葉は悪いですけど「何をやってたんだ、こいつ!」と思いますね、「いったいあの授業から、何をやってたんだろう」と。
こういう質問が出るとわかったら、そういう質問が出ないように説明の仕方を変えるべきなんです。
井上 クレームの多い企業のお客様センターが学ばないのと同じことですね(笑)。
林 いろんな職種に就いている方がいると思いますけど、チャンスは無限に落ちているわけじゃないから、若手がチャンスの場でどう振る舞うかって本当に重要。その姿勢次第で、人生が変わると思います。芸人さんも、若手のときから違うんですね。資質も違うし、その場に対する関わり方も違う。「ここで一発、名前を覚えさせてやろう!」という意欲があるかどうかで、その後の人生に違いが出てくるんでしょうね。今の若者をひとくくりにはできないけど、確率的に言うと、意欲がなかったり無関心な子が多かったりしますから……。
コミュニケーションが変わるハウツーの宝庫
林 先ほどから何回も申し上げているとおり、井上さんと私では職種が違うし、よって自然とスタンスも違ってくる。この本でも、共感するばかりじゃなく、もちろん「ここは違うな」という部分もありますが、そこはそこで興味深く読めるんですよね。
井上 ちなみに「ここは違うな」と感じたのは、どのあたりですか?