夫の年金が280万円、妻は80万円の世帯では、夫が2割負担で妻が1割負担となる。ところが、世帯収入が同じ360万円でも、夫妻の年金が共に180万円だと個人では280万円に達しないので、夫妻とも1割負担となる。

「世帯収入が同じなのに、夫の年金が多いと夫は2割負担になるのはおかしい」と言う声が出てきかねない。

 さらに、共働きだった夫妻が共に250万円(合計500万円)の年金がある世帯と、夫が280万円で妻が60万円(合計340万円)の年金を得ている世帯を比べると、後者の夫は2割負担で、前者の夫妻は1割負担となる。後者の世帯は収入が前者に比べて160万円も少ないにもかかわらず、夫の2割負担を受け入れることになり、首を傾げる人が出て来るかもしれない。

 というのも、日本の社会保障や扶養控除のある税の体系などほとんどは世帯単位となっており、介護保険制度のような個人単位は欧州で一般的だが、日本では先駆的で異色の存在。そのため、世帯単位で考えることに慣れた国民から「不公平」とする反発が予想される。

 想定される上位所得20%の高齢者は、在宅サービス利用者では約15%、55万3000人、特養入居者では約5%、2万6000人が対象となりそう。介護保険の全利用者約500万人のうちほぼ1割、50~60万人とみられる。

医療保険と比べても厳しい
「年収280万円」の線引き

 昨年6月の国会で「負担能力の高い高齢者」を巡って、厚労省がその根拠説明で訂正を迫られる一幕があった。

 当初の厚労省の説明では「上位20%以上の層は、家計調査の統計によると可処分所得が307万円あり、高齢者世帯の平均消費支出247万円を超えて60万円の余裕があるから負担可能」としていた。ところが、共産党から「取り出した統計の母集団に作為がある」との指摘を受け、「消費支出は342万円が正しく、可処分所得307万円では足りず35万円の赤字になる。説明が不十分だった」と認め、前言を翻さざるを得なくなった。

 これにより「家計に余裕のある層」という表現も、20%のラインを守りたいという厚労省の強い思いが現れ、「切り詰めれば負担に耐えられる」と言い換えて強引な資料提出となったようだ。

 この制度改変に異論も多い。