『依然として日中間に隔たりはある』と報じた新聞もあるが、「日中関係が改善の方向にあり、11月に日中首脳会談が行われる」という前提で構成された記事が目立った。

 しかし、中国側はまったく冷めた反応を示している。日本メディアは“外相会談”という言葉を使って報じたが、「人民網」(人民日報)などの中国主要メディアでは“非公式に接触”という言葉を使っている。

「“外相会談”と“非公式に接触”は、外交の世界では意味がまったく違う」とある日中関係専門家は解説する。在中国の中日関係研究者も「“接触”というのは会談のうちに入らない。ちょっと会ったというニュアンスだ」と話す。

 もっとも、外務省中国モンゴル第1課も「正式な会談ではなく、“意見交換”だ」という認識で、“意見交換”の内容について、一切オープンにはしていない。中国側の“非公式に接触”というニュアンスに近いものだと言えるだろう。

 にもかかわらず、日本では“外相会談”という言葉が使われ、報道された。中国メディアの多くは中国政府によって統制されているため、中国メディアの表現は政府の意向を色濃く反映していると見るのが自然だ。記事に使用した言葉の違いではあるが、日本メディアの報道を鵜呑みにしていては、依然として中国は改善にそれほど積極的ではない、という現実を見誤りかねない。

ホストである習近平も
難しい判断を迫られる

 もう一つ、別の見方もある。中国共産党内での権力闘争が落ち着いてきたから、日中関係改善に中国側が動き出すだろう、というものだ。

 習近平国家主席は就任直後から、反腐敗闘争を徹底的に進めている。7月末には中国共産党最高指導部である政治局常務委員を務めた周永康氏が取り調べを受けると発表された。周永康氏といえば、党内序列第9位にまで上り詰めた大物政治家。そんな大物を失脚させたことから、習近平国家主席の権力基盤は盤石になり、対日関係の改善に動き出しても党内の保守派や対日強硬派を抑えることができるという見立てだ。

 しかし、「反腐敗闘争と対日関係はまったく別」と前出の日中関係専門家は異を唱える。

「そもそも、周永康を失脚させても習近平の権力基盤が盤石にはならない。むしろ権力闘争が激しくなる。中国共産党内でも対日関係とはまったく切り離されて考えられており、日中首脳会談が同じ文脈で話されることはない」

 現在の状況では、APECの機会を利用して日中首脳会談が行われるかはまったく見通せず、中国側の対日姿勢にもほとんど変化はなく、態度が軟化しているとは言い切れない。