日本にどう接するのか
習近平側近の見立て

APEC会議付近で建設中の印象的な形をしたホテル 
Photo by Y.K.

 その夜、雁西湖の一角で、ある会合に参加した。会議の関係者や、共産党関係者が同席していたが、話題はもっぱらAPECであった。

 なぜ懐柔県という場所が選ばれたのか、工事の進展具合はどうか、各国政府が懸念する北京の大気汚染問題にどう対処するのかなど、テーマはさまざまだったが、話が外交に及ぶと、食卓の席は緊張感で包まれた。

「習近平はアメリカのオバマとロシアのプーチンとの関係にこだわっている。自らが主催するAPEC会議を利用して、米露の橋渡しをすることで、双方に恩を売りたいと思っている」

 習近平国家主席に近い共産党関係者(以下、B氏)が小声でこう呟いた。私はB氏と見合った。何かを訴えてきているような瞳。参加者がほどよく酔っぱらい、会合もそろそろお開きかな、という頃合いを見計らって、私はB氏を外に誘った。

 辺りは真っ暗だ。蝉の鳴き声だけがかすかに響いている。

「日本はどうですか?」

 私は単刀直入にこう切り出した。

 B氏は視線をそらすようにして答える。

「分からない。党上層部としても判断を急いでいない。まだ時間はある。決めるのは直前だろう」

 我々が暗に話している対象は、所謂“日中首脳会談”のことだった。

「新しい指導者は日本との関係を改善する意欲を持っているんですかね? 特に前任者と比べて。日本など眼中にないという感じでしょうか?」

 新しい指導者は習近平、前任者は胡錦濤を指していた。

「いや、そんなことはない。日本との関係は重要だ。外交案件としては最重要事項だ。ただ、安易にリスクを取れないだけだ。それに、習近平が独断で対日外交を決められるわけでもない。現職の政治局常務委員、長老たち、そして胡錦濤の意見にだって彼は耳を傾けている」

 『ただ、安易にリスクを取れないだけ』…か。私は心のなかで繰り返しつぶやいた。