2012年から毎年行っている連載「どう中国と付き合うか」。日中関係は一向に改善しないまま、すでに2年が経過している。地理的に近く、経済や文化、市民レベルでの交流が盛んな日中両国で、首脳同士のコミュニケーションがほとんど行われていない現在の状況は異常だ。関係改善のために、両国はどのような努力をすべきなのだろうか。本連載でさまざまな立場の専門家や研究者の提言を通して、答えを探る。第1回は、現在の二国間関係を整理する。(ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)
“接触”と報じた中国
“会談”に仕立てた日本
「11月のAPECしかない。ここで首脳会談が実現できなければ、当分、日中関係の回復は難しく、APECがラストチャンスになるであろう――」
丹羽宇一郎・前駐中国大使は週刊ダイヤモンド2014年5月24日号「新中国バイブル」のインタビューで、日中首脳会談開催に関してこう話しているが、これは日中関係専門家や研究者たちの共通の見方となっている。なかには「このまま首脳会談が開かれない状況が続けば、日中間の亀裂は修復不能なところまでいくだろう」という声すら聞こえる。
安倍政権内でも「日中関係改善」が、アベノミクスで景気を上向かせたあとに残された、最大の課題であると見る向きもあるようだ。
しかし、この日本国内における日中関係改善の期待が過度に高まり、現状を見誤ってしまうような報道が多い、とある日中関係専門家は話す。
一つは8月9日未明に東南アジア諸国連合(ASEAN)関連外相会合でミャンマーのネピドーを訪れていた岸田文雄・外務大臣と中国の王毅・外交部長の意見交換についてだ。
日本の主要メディアは以下のような見出しで報じている。
『日中外相、2年ぶり会談=関係改善へ意見交換』(2014年8月10日 時事通信ニュース)
『日中2年ぶり外相会談 第2次安倍内閣初 関係改善探る』(2014年8月11日 東京読売新聞夕刊)
『日中外相会談:首脳会談を要請 中国外相に岸田氏――現政権初会談』(2014年8月11日毎日新聞夕刊)