早朝に南九州で水揚げされたトビウオが、その日のうちに東京で刺身で食べられる――。そう聞くと、わざわざ予約をしてでも目当ての店まで食べに行きたいと考える人も多いことだろう。

 こうした朝獲れ鮮魚の当日提供はアピール力抜群の集客ツールであり、他店との差別化にこの上なく役立つ特効薬ともなりうる。ひと昔前なら漁港近くの料理店や民宿にしかできなかったことが都会でも可能になったことの裏には、物流とITのチカラが大きく働いている。

 ヤマトホールディングス傘下のヤマトグローバルエキスプレスが提供する「生鮮時間便」は、航空便を利用することにより九州や北海道でその日の朝に収穫された生鮮食料品を当日中に店舗に届けることができる。たとえば羽田空港には午前10時頃に飛行機が着くため、午後2時までには朝獲れ鮮魚を店舗に届けられる。捌いたり調理したりする手間を考えても、夕方からの書き入れ時に充分間に合う到着時間だ。

ぴちぴちの鮮魚が大量に獲れるのに!
離島という地理条件のせいで二束三文でしか売れない

「生鮮時間便」地域を限定して提供していた「時間便」の対象地域を拡大し、生鮮食料品に特化して始めたサービスだ。その背景には、2004年の卸売市場法の改正で築地などの市場を通さない直接取引がより自由にできるようになるなど、インターネット経由での取引が盛んになったことがある。

ヤマトの「生鮮時間便」で朝獲れ鮮魚の当日配達が可能に

 ネットオークションが普及したことで、レトロ玩具のコレクターはお店を探し回らなくても他の収集家から直接レアアイテムを入手できるようになった。それと同様に、わざわざ築地に行かなくても流通業者が漁師や漁港の卸業者から直接魚を買い付けるという流れができつつあったのだ。

「生鮮時間便」の契約先である、東京のとある鮮魚居酒屋は、宮崎県延岡市沖にある離島の漁師と直接取引きをすることで、定置網で早朝に収穫したアオリイカやトビウオなどを届けてもらっている。漁師にとってのメリットは、言うまでもなく市場を通すよりも高く魚が売れることだ。