英国の北部に位置するスコットランドは、人口は約530万人(英国全体の8.3%)、首都はエジンバラに置かれている。そのスコットランドが2014年9月18日に、英国のイングランド、ウェールズ、北アイルランドから構成される連合王国からの独立の是非を問う住民投票を行う予定であり、現在、その動向に全英だけでなく欧州全体が注目している。

なぜ独立を目指しているのか

すげの・やすお
1999年大和総研入社。年金運用コンサルティング部、企業財務戦略部、資本市場調査部(現、金融調査部)等を経て、2013年4月より現職。担当は欧州経済・金融市場。著書に『バーゼル規制とその実務』(金融財政事情研究会、2014年2月、共著)。

 現在の英国の形が作られたのは、1707年の連合法によりスコットランドがイングランドと合併し、連合王国の誕生と同時にその一員となったことに遡る。形式的には対等とされた合併だが、スコットランド議会は閉鎖されてウェストミンスター議会に一本化され、主な機関もイングランドに置かれたことから、スコットランド側には不平等なものと受け止められていた。

 また、宗教や文化などイングランドとは異なる独自性を持つことから、独立や自治の拡大を求める声は古くから存在した。無論、1970年代より北海油田の開発が進んだことなど、経済的自立の展望も開けてきたことが、独立の気運を高める要因となったことには違いない。歴史的にはイングランドに虐げられ続けたという思いも強く、独立をすることはスコットランド住民の長年の悲願ともいえるであろう。

 1995年に制作されアカデミー作品賞を受賞した映画「ブレイブハート」の中で、メル・ギブソン扮するウィリアム・ウォレスは、イングランドからスコットランド独立のために戦った実在の人物でもある。

独立の住民投票に至るまでの経緯

 独立を問う住民投票に至った背景は、スコットランド国民党(SNP: Scottish National Party)が、スコットランド議会選で勝利した2011年5月まで遡る。この選挙でSNPのアレックス・サモンド党首は、SNPが勝利したあかつきには、スコットランドの独立を問う住民投票の実施を公約に掲げていた。選挙の結果、SNPは予期せぬ単独過半数を獲得し、独立を問う住民投票に必要な法律を制定することが可能となった。