アラブの男たちは、客をとことん歓待する

 この日の夜は、兄弟たちとキャンプ内の商店街に行った。電気屋に雑貨屋。卵屋に八百屋。家具屋にパン屋。照明はどの店も蛍光灯ではなく白熱灯だ。だから商店街全体がうっすらと赤い。でも路地の奥は暗い。明暗がとてもはっきりしている。何となく夏祭りの縁日のようだ。

 カフェではアラブ式コーヒーを飲みながら、カード遊びに興じた。勧められるままに水パイプも吸った。カフェの客はすべて兄弟の顔見知りだ。みな初めて見る日本人に興味津々だ。ババ抜きを教えたら、すっかり夢中になっていた。

 カフェを出てから隣の露店で、ほかほかと湯気の立つ揚げたてのソラマメとヒヨコマメのコロッケ(ファラフェル)を、全員で買い食いする。思わず声が出るほど美味い。ビールが飲みたい。空気はカラカラに乾燥しているから、もしも今飲んだら、これまでの生涯で最も美味しいビールになるかもしれない。でもここでは諦めるしかない。

 カフェなどの勘定は、すべて長兄のムーサが払っている。コロッケくらいはお礼に奢ろうと思って財布をポケットから取り出そうとしたら、とても強い調子で兄弟たちに押しとどめられた。客に対してアラブの男たちは、とことん歓待する。その客がどんなに豊かな国から来ていても関係ない。

 家に戻れば食事の用意ができていた。全員で床に座って食べる。鶏肉のケバブ。パセリやトマトをたっぷり使ったタボーレ。ナスをペースト状にしてスパイスを利かせたモウタベル。他にもたくさん皿が並べられている。

 がつがつ食べているそのあいだも、居間の扉は何度も開き、ひっきりなしに兄弟の友人が訪ねてくる。たぶん日本人を見に来たのだろう。そのたびに床から立ち上がって握手をくりかえす。