自動車業界に続き、大手電機メーカーでも2009年3月期の業績が加速度的に悪化し始めた。2月2日までの新聞報道や各社発表によれば、最終赤字はパナソニックで3500億円、NECで2900億円、東芝で2800億円、リストラで先んじたソニーでも1500億円になる見通しだ。中でも酷いのは日立製作所で、最終損失は過去最悪の7000億円に膨れ上がるという。昨年10月時点で600億円の黒字を見込んでいた富士通も200億円の赤字に修正、さらに液晶で成功したシャープも採算悪化で赤字に転落すると報道されており、“総崩れ”といっていい有様だ。
業績急降下の直接的な要因は、リーマン・ショック以降の世界不況や円高の進展、自動車関連のエレクトロニクスの急激な落ち込みだが、率直に言って、各社とも経営構造にも相当の問題があるのではないか。
そもそも電機セクターは、株式市場では長年“ハイテク”と呼ばれてきたが、実際には商品のコモディティ化が物凄い勢いで進み、ハイテクで高付加価値というイメージには程遠い。売れ筋が5万円を切るミニノートが主力となったPC市場は象徴的な例だ。メーカーも従来からの製品との競合を考えるとあまり安いものは出したくないが、安いものを出さないとシェアが下がるから出さざるを得ない。しかしそれでは儲けにならないどころか、下手をすると赤字になるといった悪循環が存在する。
端的に言って、似たようなものを作っているメーカーがたくさんありすぎる。加えて、海外製品との競合が本格化してきた。量販店に行くと、目移りするぐらいの数の競合商品があることは、消費者の立場で考えると豊かな状況だが、メーカーにとっては「利益なき繁忙」の表れにすぎない。コモディティ化したビジネスを本体で取り扱おうが、子会社に切り離そうが、結局は、マーケットに同じような製品が出回る限り、利幅はどんどん下がる。しかし、総合電気メーカーの看板がある以上、低採算品の市場から撤退できないという一種の「総合の呪い」に陥っている。