ピクサー・アニメーション・スタジオ――。 『トイ・ストーリー』『モンスターズ・インク』など、次々と大ヒット映画を世に送り出してきた「世界最高峰のアニメ制作会社」である。その伝説的な会社で活躍した日本人がいる。堤大介さん、39歳。どうやって、「世界最高峰」にたどり着いたのか? 話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド社 田中 泰)

ジョブズが生み出した
「世界最高峰」のクリエイティブ集団

堤大介(つつみ・だいすけ)
アニメーター。元ピクサー・アートディレクター。1974年、東京生まれ。高校卒業後、単身、ニューヨーク州のコミュニティカレッジに留学。ここで、「絵」と出会う。美大に進み、トップクラスの成績で卒業。その後、ゲーム開発会社を経て、CGアニメーション製作会社ブルー・スカイ・スタジオに移り3作のコンセプト・アートを担当。その実績が認められ、ピクサーに引き抜かれる。『トイ・ストーリー3』『モンスターズ・ユニバーシティ』などのアートディレクターとして活躍する。また、ピクサーの同僚ロバート・コンドウと短編アニメ映画『ダム・キーパー』(各国のアニメフェスティバルで受賞)を自主制作するなどの活動も展開。2014年7月、ピクサーを退職。ロバート・コンドウとともにトンコハウスを創設し、映画を始めとするコンテンツビジネスを始めた。

 ピクサーが設立されたのは、1986年。

 アップルを追い出されたスティーブ・ジョブズが、ルーカス・フィルムのコンピュータ部門を買収し、映画制作会社として独立させたことはよく知られる。

 そして、共同創設者であるエド・キャットムル(ピクサー社長)やジョン・ラセター(ピクサー制作総指揮)らとともに、創造力を最大限に発揮する「世界最高峰のクリエイティブ集団」をつくり上げたのだ。その経緯は、10月2日発売の『ピクサー流 創造するちから』(エド・キャットムル著、ダイヤモンド社)に詳しい。

 ちなみに、メガヒットとなった『アナと雪の女王』をつくったのはウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ。しかし、そのトップを務めるのはエド・キャットムルとジョン・ラセターだ(ディズニーのピクサー買収後、ふたりは両社のトップを併任)。CGアニメーションへの対応が遅れたこともあり、一時期低迷したディズニーアニメを立て直したのは、エドやジョンらが持ち込んだ「ピクサーの文化」なのだ。

 堤大介さんは、その伝説的な会社で活躍した数少ない日本人である。

 入社したのは2007年。その後、『トイ・ストーリー3』や『モンスターズ・ユニバーシティ』などの大ヒット作で、アートディレクターとして活躍。世界にその名を知られるアニメーターとなった。