1つは、自分が知っていることと知らないことを正確に把握しているかだ。「無知の知」である。それをわかっていないと、本来正しい判断をできる人物が身近にいるにもかかわらず、間違った決定を行う可能性が高くなるからだ。自分が最良の意思決定者なのかどうかを判断する目が、重要なのである。

 もう1つは、知っている情報で出した結論に説得力があるか否かだ。これは、意思決定者としての能力の高さを表している。

 彼はこの2つともに、これまでの候補者のなかで最高だったと彼女は判断し、ほとんどの項目に「5」をつけた。

「なぜあの人の評価が最低なんですか?」
「彼のためにも他社に行くほうがいいよ」

 だが、彼女はA氏の提出した評価表を見て、目を丸くした。ほとんどの項目が「1」だったのだ。

 彼女以外の面接官は、彼女と同様、彼に対して高い評価をしていた。だが、会議の場になると、責任者であるA氏の評価ウエイトは高い。

 彼女は思い切って、A氏に質問した。

「なぜ、彼の評価がこうも低いのでしょう。私は、他の候補者と比較しても、彼が突出して良かったと思いますが」

 A氏はすぐにこう答えた。「うん。君の言っていることはよくわかるよ。確かに彼は優秀だよ。彼ほどの人物ならば、うちが採らなくても必ず他の会社が拾うよ。そこで必ず彼は活躍できるはずだ。うちの社風には合わないね」

「社風? 何ですか、それは? そんな人材だからこそ、わが社に欲しいのではないのですか?」

 彼女はごく当然な質問をした。

「うん。だからね。彼が数年後にうちから他社に引き抜かれていくのを見るのは、君も嫌だろ。彼のためにも、他社に行ってもらった方がいいんだよ」