アマゾンがニューヨークに路面店を開くらしいと、話題になっている。

 同社が正式に発表したわけではないものの、場所はマンハッタンの西34丁目7番地。毎年、大きな感謝祭パレードを行うことで有名なデパート「メーシーズ」の数ブロック先、エンパイアー・ステート・ビルディングの真向かいという立地だ。数件先には、ユニクロのショップもある。

 このあたりは、5番街や西57丁目のようなおしゃれなショッピング地域ではなく、どちらかというと雑然とした雰囲気。数ブロック南へ下がると、韓国料理店がたくさん並ぶ、くだけた場所だ。ニューヨークのターミナル駅の1つであるペン・ステーションにも近く、人々が行き交う動線を考えれば決して悪い場所ではない。

 さて、その7番地に現在建っているビルは12階建てで、1階部分にはまだショップが2件ほど営業中。そして、上階のオフィス部分には、いくつものテナントが入っているらしい。

 オンラインショップの先駆けとして、品揃えからロジスティクスまで極みを探求してきたアマゾンが、なぜ今路面店をオープンするのか。アマゾン小売ショップのうわさは数年前からささやかれていたのだが、その真意を誰もが図りかねている。

「また、あのアマゾンが風変わりなことを…」と笑い飛ばしたい一方で、「いや、アマゾンがやることだから、今まで誰も思いつかなかったようなショッピング業界の大革命が、目の前で起ころうとしているのかもしれない」という好奇心も渦巻いている。

 いずれにしても、今年もクリスマスシーズンがまもなくやってくる。きっとそれまでにはオープンするだろうから、真実は遠からず明らかになるはずだ。

既存の商品の販路を拡大する
リアル店舗の場合

 アマゾンが路面店を開くとすれば、いったいどんな品揃えになるのだろうか。

 そもそもオンラインショップが路面店を開くなど、これまでは考えられない無駄なことに見えたのだが、最近になって前例がいくつか出ている。

 それはだいたいがファッション系、オシャレ系で、メンズファッションの「ボノボス」、高級ファッションのアイテムが貸衣装できる「レント・ザ・ランウェイ」、毎月試供の化粧品を送ってくる「バーチボックス」などが、オンラインショップの後に路面店を開いている。

 試着ができる、手に取って見られるという利点が小売店にはあるが、それと同時に客と直接の関係、親密なつながりは対面販売でなければ築けないという意識が、ショッピング業界には動かし難いものとしてあるという。