まず、従来からの分析ツールは非常に高価で、とくに中堅以下の企業が導入するにはハードルが高すぎたことだ。自社内に分析ツールを導入するより、スポット的に外部の専門企業に分析を依頼するほうが安くなる。そのため、分析を発注してから結果が届くまで時間もかかり、分析の設定を変えるようなことも簡単にはできなかった。

 もう1つは、分析対象のデータが、企業内にバラバラに存在していて、フォーマットが統一されていないことだ。多くの企業では、もともと事業ごとにシステムのデータの形式はまちまちで、販売や在庫などのデータも個別に管理されている。業務データを統合した「ERP」と呼ぶシステムを導入している企業も大手を中心に多いが、それ以外のシステムと連動した分析をするためには、大手ベンダーの統合システム(スイート)を導入するか、つなぎたいデータごとに個別開発するしかなかった。

 セールスフォースは、クラウド環境で使う分析ツールによって多額の初期費用を不要にして、コストを大幅に安くした。そして、分析するための情報を格納する「WAVE(ウェイブ)」というデータ基盤を開発した。バラバラのデータでも、WAVEの中に取り込むと、必要なデータを検索して分析に使用することができるという。

 WAVEと連動する分析用アプリケーション「アナリティクス・クラウド」も同時に発表した。スマートフォン、タブレットで現場の社員が簡単にデータ分析を行えるよう、ユーザーインターフェースにも工夫を凝らした。

「モバイルゲームのインタフェースを研究して実装したため、非常に滑らかにグラフィックが動く。これこそがウェイブ」(パーカー・ハリス共同創業者、技術統括)。確かにデモで、スマホ上で分析結果が棒グラフ、円グラフと滑らかにモーフィングする視覚効果は、使って楽しそうな印象を持った。

 アナリティクス・クラウドを担当するキース・ビーグロウ シニア・バイスプレジデントは、「セールスフォースが創業した15年前、主要な“レガシー”CRMベンダーは4社存在したが、それらを追い抜いて世界一になった。一方現在、アナリティクス市場にも、たまたまだが主要な企業が4社いる。セールスフォースはこのマーケットを大きく変えていく」と宣言してみせた。

「分析のための分析」ではなく
現場発の仮説を検証できるツール

 セールスフォースが今回のアナリティクス製品で強調しているのは、「トランザクションに直結する分析」である。

 どういうことかとうと、従来のデータ分析システムは高価でもあるため、役員会で市場動向、顧客動向などをもとにトップにプレゼンするためのツールとして使われるイメージが強かった。そのため、業務の現場で使いこなす小回りのよさはなかった。

 セールスフォースのアナリティクスの考えは、その逆をいく。