10月3日に日本銀行が実施した、日本国債の一種、国庫短期証券(Tビル)の3.5兆円買い入れオペは衝撃だった。この時期に日銀がこれほど大量にTビルを買うということは、今の資金供給策が限界に近づいていることを意味するからだ。
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日銀は昨年4月に量的質的緩和策(異次元緩和策)を導入した際、ある補足資料を提示した。それが「マネタリーベースの目標とバランスシートの見通し」だ。その中で、2014年にマネタリーベース(現金+日銀当座預金)を70兆円増加させ、年末に残高を270兆円にすると説明していた。
その主要手段は長期国債の買い入れで、このオペで年間50兆円が供給される。それは来年も実施可能だろうが、問題は残りの20兆円の増加部分だ。その大部分は貸出支援基金とTビル買い入れオペで埋めなければならない。
ところが、9月以降、そのTビルは市場で大幅に不足し、日銀の買い入れ金利はたびたびマイナスとなった(債券の価格と金利は逆に動くため)。市場でのTビル発行量は、9月末時点で127.5兆円と依然として巨額だが、三つの理由から不足感が強まった。
第一に、日銀の買い入れ額が累増してきた。今後も、多少の上下動は伴うが基本的に増加する。
第二に、四半期末は金融機関がバランスシートの見栄えを整えるため、Tビルを買い増す傾向が強まる。この要因は10~11月には消えるが、12月に再び現れるだろう。