ブランディングとともに進化するビジュアルコミュニケーション
「to」から「and」の時代へ

 ブランドが伝えるべき情報をいかに視覚化し、生活者や顧客とどのようにコミュニケーションするか?ブランドを成長させるために有効なビジュアルコミュニケーションとはなにか?

 まずは時代を経て変化してきたブランディングの役割と、それと足並みを揃えるように進化してきたビジュアルコミュニケーションについて、米通信事業最大手であるAT&Tを例に解説したい。

シンボルにブランドの想いを象徴化させるコミュニケーション
~ブランディング0.0

 AT&Tは1984年、会社分割され再スタートする際に、地球と通信をモチーフとしたシンボルを制定し、運用を開始した。そのシンボルを中心としたコミュニケーションはCI(Corporate Identity)いう名で知られている。その手法が多くの企業に導入され、一大ブームを巻き起こしたことを記憶に留めている方も少なくないだろう。

 インターブランドは、この時代をブランドの黎明期として「ブランディング0.0」と位置づけている。この時代に、シンボルを象徴的かつ統一的に示すことが、企業の存在感を向上させ、競合との優位性を高める手法として確立されたのである。

「アイデンティティ競争」から、「ブランドエクスペリエンス競争」へ
~ブランディング1.0

 CIが世の中で当たり前になった2000年以降、ブランディングは自らをいかに際立たせるかという「アイデンティティ競争」から、どのようなブランド体験を提供し、競合他社との違いを明確にするかという「エクスペリエンス競争」へと、その役割を変化させてきた。CIによる画一的なコミュニケーション、言い換えれば「アイデンティティ」を伝えるだけのブランディングでは生活者との間に距離が生じてしまい、その距離を縮めるためのブランディングに移行することが必要になったことが、その最大の理由だ。

 この時代に、AT&Tというブランド名の表記は、より身近な印象を持つ小文字の“at&t”に変更され、カラー、書体、写真やイラストなど、様々なデザイン要素の見直しが図られた。こうした取り組みは「ブランディング1.0」と位置づけられ、「一貫性」や「統一感」に重きが置かれていたCIの概念に一石を投じることになった。