グローバルな統合に向けての課題

 グローバル企業は、いわば魑魅魍魎が住む世界です。さまざまな人たちがさまざまな思惑で働いています。決して悪人というわけではないのですが、全ての従業員が滅私奉公して会社に尽くすなんてことは期待できません。働く者の権利として、自分自身の利益を大切にすることは正当なことですし、望む報酬や役職を得るのに5年10年と辛抱強く待つ人たちばかりではありません。

 そんな中で単に業績管理をすれば、自分の成績がよく見えるように低い目標設定を正当化しようとする社内交渉が頻発したり、任期中に成果を出すことばかりに終始したりと、近視眼的な経営が行われかねません。まして、異文化圏の人たちを同じ方向に向けさせることは至難の業です。

 このように、グローバル企業も多くの課題を抱えているのです。グローバル企業として乗り越えなくてはならない課題をまとめると、次の4つに絞られます。

1. 惰性で動いてしまいがちな各国、各部門に緊張感を与えてベストな結果が出るように導く。
2. 各国、各部門に、自分本位ではなく会社として整合性のある動きをするように伝え、期待される結果を明確にする。
3. 会社全体でゴールを共有する。
4. 迅速、明確に意思決定できる体制を作る。

解決策は仕組みだけではない
~ハード30+ソフト70

 グローバル企業は、課題を乗り越えるために、どのような経営管理を行っているのでしょうか。

 第1に、仕組みとしては、多くの会社が予算制度を用いています。予算制度自体は、特別なものではなく、年が始まる前に目標設定をして、定期的に予算・実績を評価していくというものです。仕組み自体は、日本企業でも欧米企業でも大差ありません。

 仕組みだけで上手くいくかといえばそうはいきません。数字は、紙の上で眺めているだけではあまり意味はないのです。お互いの意図を戦わせ合う対話がなくては、業績管理はできません。

 本社サイドに、目標達成に対する強い決意、言い訳を許さないビジネスを見る目、人事権といった権力があってこそ、緊張感が生まれ、数字が信憑性を持ちます。また、対話を通して、数字が希望的観測なのか、現実的予測なのか、どれくらい厳しい経営努力をした上で出てきた数字なのか、意図が明確になります。

 第2に、各国・各部署の現状を把握した上で、全社的に明確で適切な判断がなされなくてはなりません。業績が低迷する国に対する戦略的投資を先送りにするとか、売上げ好調でも利益が足りない国は価格政策を見直すなど、状況に応じた判断をします。

 その際、決断を下すために、誰が決定権限を持っているのかが明確でなければなりません。そして、決定者は情実に流されることなく、業績にとって最適な判断をしなくては各国、各部門からの信頼を勝ち取ることはできません。