紆余曲折の新ポスティングシステム
翻弄された世紀の逸材・田中将大投手

 今年の日本球界の話題は、楽天の田中将大投手に集中したといっても過言ではないだろう。ペナントシリーズで24勝0敗1セーブポイントという気が遠くなるような記録を残し、日本シリーズでも活躍し、楽天を日本一に導いた。

 その実績は、かつて「鉄腕」と謳われた稲尾和久投手のシーズン勝利数42と同様、将来も破られることはないかもしれない。

 シーズンが終了した現在も田中投手が注目されている理由は、12月中旬に日米間で合意された新しいポスティングシステム(プロ野球の入札制度)の仕組みを使って、メジャーリーグベースボール(MLB)に挑戦しようとしていることだ。もともと新ポスティングには賛否両論様々な意見があり、日米の野球関係者の間で話がまとまるまでに紆余曲折があった。

 今までは、MLBの球団が日本の優秀な選手を採る場合、当該球団が日本の球団に支払う入札金額に上限を定めていなかった。そのため、松坂やダルビッシュのポスティングのケースでは、日本の球団には50億円を超える資金が入ってきた。

 ところが新システムでは、入札金額に2000万ドル(約20億円)という上限が設定された。MLB側の論拠としては、資金量が相対的に少ない球団でも、日本の優秀な選手を採る可能性を増やすことを目指すという。

 しかし、この論拠にはほとんど説得力がない。なぜなら、上限2000万ドルの入札金を用意して争奪戦に参加しても、結局選手の年棒が上昇することになり、資金力の大きな球団が日本の優秀な選手を取ってしまうことになるからだ。

 入札の上限2000万ドルは、ある意味ではMLB球団が日本人選手を採るときに費用を削減する効果が最も大きくなるはずだ。評論家の1人は、「今回のポスティングシステムは、治外法権の復活に等しい」と指摘していた。