中国人労働者が自殺ショーで
賃上げ交渉する背景
「中国人は『給料上げろ』って自己主張ばかりで困るよ」
中国人を雇用している日系企業の管理職の悲鳴をよく耳にする。
しかし、中国では、自分を過大に評価しアピールしなければ、残業代未払いどころか低賃金で不当な扱いを受け続けている例が多いのも事実だ。
近年、中国で流行していることといえば、自殺ショーで賃上げ交渉すること。
先日も広州で中小規模の不動産会社との賃金交渉による労働者の自殺ショーがあった。入社時は「給料+歩合」を約束をしたが、金融危機後は、歩合を半分に下げられたのだ。
従業員がマンションの屋上の端に立ち「給料を上げろ、さもないと飛び降りるぞ」と大声でわめき散らした。いつも強気で傲慢な経営者も、このときばかりは違う。警察や消防関係者に周囲を取り囲まれれば、意外に簡単に折れるものだ。経営者にとってみると、会社の評判も悪くなり、公安局に目をつけられたら今後の仕事がしづらくなるためである。
中国ではここまでしなければならないのは、従業員の扱いがひどいからなのである。
労働組合の土壌がなく
個人の交渉力が強い
中国では従来、日本でいう労働組合、労働協約といった存在がほとんどなかった。「集団契約規定」がようやく2004年に公布され、広東省などでは「賃金集団協議制度」(従業員の代表が、企業側と公平な協議を行い賃金の分配制度や金額、支払い方法、調整規則などを取り決める制度)をとりいれた国有企業が増えてきた。しかし、それまでは企業との交渉は全部個人がしなければならなかったのだ。
さらに、中国の経済成長率は高いが、同時に物価上昇率も高い。都市部の社会保障局によると3%から上限16%が賃金上昇のガイドラインとされているため、多くの従業員は賃金は増えて当然だと考えている。