妻 「裕美と小学生の同級生だった亜紀ちゃんは、看護学校を出て来年から看護師になるらしいわよ」
娘 「彼女のお姉ちゃんは薬剤師になって調剤薬局で働いているよ」
父 「裕美は会社員以外の道は考えていない訳だ」
娘 「大学院に行くとか、バイトでつないで1年留年する予定の人もいるけど、私は、一般企業で働いてみたいと思ってる。何かずば抜けた能力もないし、とにかく自分で稼ぎたい気持ちが強いのよ」
妻 「お父さんは、『いい会社』を選ぶのは無理だとか、好きな仕事を見つけるのに焦ることはない、と言うけれど、それじゃ、どう考えればいいの?」
父 「そうだなぁ。縁のあった会社で、まず3年間懸命に働いてみることかな」
10年以上前の支店次長職の時、4月1日の最初の仕事は毎年決まっていた。本店で入社式を終えた新入職員を支店まで引率して帰るのだ。途中でホテルの喫茶店で軽い顔合わせをする。ある年の女性5人の中に、短大を卒業したKさんがいた。少しおどおどした様子で、うつむいて話し、正直言って“ちゃんと勤まるかな”と心配になった。彼女は、支店からかなり離れた営業所に配属が決まっていた。
それから3年。私がその営業所に出向くと、窓口で男性客が「納得できない」と声を上げて怒りだした。応対に出たKさんは、相手の感情を受け止めながら、きちんと事務の説明をして、最後は笑顔で男性客の納得を得た。周りは当たり前の様子だったが、私だけが彼女の成長ぶりに感激していた。
この「3年間」に私は非常に興味を持っている。比較的大きな組織のビジネスマンから転身した方々の話を聞くと「3年で一つのメドがついた」と話す人が圧倒的に多い。1~2年や5年という話は出ない。また比較的転勤の多い金融業界でもひとつの職場にいるメドを3年としている会社は多い。