4年ごとに行われる大統領選の中間の年に、全米で一斉に新しい上下院議員や州知事が選ばれる米国中間選挙。その投票日まであと4日となった。民主党と共和党の激戦が繰り広げられるなか、今注目を浴びているのは、牛肉とコーンの産地、中西部のカンザス州だ。保守の共和党が圧倒的に強いはずのこのレッド・ステイトで、現職の大物ベテラン共和党政治家2人が民主党と独立系の若手候補に敗れるかもしれないという、前代未聞の異変が起きているのだ。カンザスの投票結果は、ワシントンのオバマ政権の今後のパワーバランスを左右するインパクトになると言われている。米国の政治は、果たしてどこへ向かうのか。運命の鍵を握るカンザスに飛び、現地で住民と候補者の生の声を聞きながら、今後の政局を占う。(取材・文・撮影/ジャーナリスト・長野美穂)
オバマ政権の行方を左右する中間選挙
カンザスでいま、何が起きているのか?
地平線の彼方まで広がるとうもろこし畑と、放牧的な大地で草を食む真っ黒な牛たち。そんなのどかな田園風景を眺めつつカンザスシティから数時間車を走らせると、人口約40万人を擁する同州最大の都市ウィチタに着く。
かつて、第二次世界大戦中に日本の国土に爆弾を落としたボーイング社製のB‐29戦闘機の多くがこの街で製造されていたため、ウィチタは「米国の航空産業の中心地」として栄えてきた。
だが9.11テロの後には、航空産業の需要が落ち込み、航空機製造の減少で大きな打撃を受けた。
そのウィチタの中でも特に貧しい黒人住民が大半の地域で、民主党所属の州知事候補であるポール・デイビスを囲みタウンミーティングが開かれていた。
「我々は、あと4年間も今の州知事のサム・ブラウンバックの政治を我慢できない。黒人やラティーノ、移民や貧乏人を徹底的に痛めつけ、金持ちだけを優遇してきたブラウンバック支配にノーをつきつけるのは、今しかないんだ」
黒人とヒスパニック系住民が中心となる地元コミュニティ団体のカルロス・コントラレスがマイクを握ってそう宣言すると、集まった100人ほどの住民たちは「そうだ!」と拳を振り上げた。