「香港のデモは米国の陰謀」。日本人には信じがたい話だが、ロシアでは、これが「定説」だ。単なる独裁国家のウソなのか、それとも多少なりともウォッチする価値のある説なのか?――。独裁国家であるロシアや中国のみならず、実は欧米も「大ウソプロパガンダ」を繰り広げている。つまり、自分たちに都合のいい情報を流しているのだが、一方で敵のダークサイドはバンバン報道することが奨励されている。ここに着目すれば、意外な「真実」が見えてくることもある。

「朝日をつぶしてしまえ!」――。慰安婦問題をめぐる「誤報」で、大バッシングにあっている朝日新聞。モスクワ在住の筆者が日本の友人・知人に聞くと、かなりの割合で「朝日はつぶすべきだ!」という答えが返ってくる。そんな反応を聞くと、筆者は「日本はまだまだ健全だな」と思う。

 日本人の立場からすると、朝日のしたことは「ひどい」。いわゆる「誤報」のせいで、日本は、「韓国人女性を20万人強制連行し、性奴隷にした野蛮な国」という汚名を着せられてしまった。だから、ウソに激怒する国民の反応は健全である。

 しかし、実をいうと、ウソをつくのは朝日新聞だけではない。世界を見ると、「客観報道」など存在していないことがわかる。独裁国家の中国、ロシアだけでなく、米国でも欧州でも、「大ウソプロパガンダ」が行われているのだ。

国家はみんなウソつき!?
客観報道は本当に存在するのか

「世界に客観報道が存在しない例」は、山ほどある。そもそも「客観報道が存在している」のなら、ある事件について、全世界どこでも似通った報道内容になるはずである。ところが「国」や「地域」が違えば、同じ事件に関する報道内容は、かなり違ってくる。それどころか、二つの国でまったく正反対の結論が定説になっていることも、珍しくない。