ウェブサイトの画面上に浮かび上がるのは、シルエットに包まれたクルマのボディライン。アップされている画像は一部分に限られ、詳細な仕様などは一切、掲載されていない。
一見、欠陥的なウェブサイトに思えるが、これは10月16日にホンダが発表を予定している新型「オデッセイ」の専用ウェブサイトだ。
テレビCMなどに先行して一般向けに9月19日から公開されたもので、いわゆるティザー広告のウェブサイト版である。
「tease=じらす」を意味するティザー広告とは、発売前の商品の情報を小出しにすることで消費者の興味を引き付ける、いわば"おとり広告"の一つ。
このオデッセイのウェブサイトでは、正式発表まで随時、新しい写真や情報が更新され、文字通り消費者をじらし続ける仕組みだ。
自動車業界において、ティザーサイトそのものは、富士重工業が6月に発売した「エクシーガ」でも取り入れており、特別、珍しいものでもない。
ただ、今回のホンダの手法で特徴的なのは、ティザーサイトの開設をあえて新聞などのニュースメディア向けに発表し、続いてオデッセイの新聞・雑誌などにイメージ広告を打ち、自社のウェブサイトに誘引するというマーケティング手法をとっていることだ。
このような手法は、ホンダ社内では"マルチ・コンタクトポイント戦略"と呼ばれている。
つまり、新聞や雑誌、テレビ、チラシなど、あらゆる既存のニュース媒体や販促媒体を利用して、自社のウェブサイトに引き込み、効果的・効率的に販売促進活動を行なうというマルチメディア戦略である。
ネットを中核とするが、他の既存媒体も効果的に利用するのがポイントである。「新聞なら、50~60代、テレビなら30~40代が中心となる。ネットの場合、20代~50代と既存メディアに比べ、広い世代層を網羅できるが、逆に10代や60代以上の高齢者には影響力がほとんどない」(ホンダ関係者)からだ。
実際、オデッセイのように、対象ユーザーの年齢層が広い車種の場合、このような全方位的なメディア戦略は有効だろう。
そもそもホンダは、自社サイト内において、ホンダに関するマメ知識の検定試験「Honda模試」や、飼い犬や菜園に関するコミュニティサイトを開設するなど、ユニークな活動をしてきた。
こうしたコミュニティサイトの閲覧者や登録者は、総じてホンダに関心の高い人や、ホンダ車オーナーであり、優良な顧客の囲い込みにつながる。「潜在顧客の発掘や保有台数の維持につながるだけでなく、ネット上の口コミによる販促においても力強い応援団にもなる」(別のホンダ関係者)。
現在、ホンダのネットによる新車販売貢献度は約40%。将来的には50%にまで高めるという。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 山本猛嗣)