国連勧告も無視して進められてきた
生活保護制度の改悪

 第二次安倍内閣が誕生したのは、約2年前の2012年12月であった。

 この時期の厚労省は、貧困問題に関わる二つの部会を開催していた。現在も開催が続いている社保審・生活保護基準部会と、同じく社保審・生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会(以下「特別部会」)である。

白井康彦氏(本連載第52回参照)は、2014年10月9日、著書「生活保護削減のための物価偽装を糾す! ―ここまでするのか! 厚労省」(あけび書房)を刊行した。森永卓郎氏との対談も収録されている

 2013年の年明けとともに、二つの部会は慌ただしく開催され、それぞれが結論を報告書に取りまとめた(2013年1月に公開された基準部会報告書特別部会報告書)。その数日後、厚労省は資料「生活保護制度の見直しについて」を公開した。

 この時、生活扶助を平均6.5%引き下げる方針が示され、「激変緩和措置」として三段階での実行が既に行われている(2013年8月・2014年4月・2015年4月(予定))。引き下げの理由は、厚労省が独自に考案した「生活扶助相当CPI」という指標に示された物価下落であった。この指標の妥当性については、ジャーナリストの白井康彦氏(中日新聞社)(本連載第52回参照)を中心として、統計学・社会福祉学の専門家たちが検討を続けており、「物価下落の過大偽装」と言っても差し支えない内実が明らかにされている。

 2013年5月17日、国連・社会権規約委員会は日本に対して勧告を行った。この勧告には、日本の生活保護制度を利用しやすく改善し、利用者が屈辱を感じないように社会教育を行うことが含まれていた(日本語訳)。しかし奇しくも同日、内閣は全く逆行する「改悪」を内容とする生活保護法改正案を、衆議院に提出した。この改正案は6月の国会会期終了とともに廃案となったが、7月の参院選を経た後の9月に再度国会に提出され、12月に成立した。すでに本年2014年7月1日より施行されている。

 この間、「アベノミクス」によって、景気には一定の改善が見られる一方で、円安と物価上昇が進行している。また2014年4月からは、消費税もそれまでの5%から8%となっている。2014年4月1日、生活保護世帯すべてに対して行われた生活扶助費改定では、消費増税の影響を織り込んだ増額・2013年1月に決定された方針による減額・物価変動の影響を考慮した変額が同時に行われており、「世帯によっては若干の増額となる」など、極めて分かりづらい結果となっている。なお、物価下落が大きく・物価上昇が小さく出る傾向を持つ「生活扶助相当CPI」を用いた計算でも、この指標が物価下落を導き出すのに使用された2011年に比べ、2014年は5.13%の物価上昇が見られる(久留米大学准教授・上原紀美子氏(社会保障論)が作成した2014年11月5日の院内集会資料(前述)による)。