現在、生活保護基準部会では、住宅扶助を中心に数多くの扶助・加算の見直し(事実上の削減)が検討されている。結論は、11月中にも取りまとめられると見られている。どのようなデータにもとづき、どのような議論によって、結論が導かれようとしているのだろうか? そこに、偽りのデータや誤った推論はないだろうか?
生活保護世帯の子どもたちが
近未来の標的に?
今回は、前回に引き続き、2014年10月21日に開催された社会保障審議会・第十九回生活保護基準部会(以下、基準部会)で行われた議論をレポートする。
この基準部会では、住宅扶助だけではなく、子どものいる世帯(有子世帯)に対する扶助や加算・冬季加算についても短時間ながら議論が行われた。また生活保護基準の算定方式についての問題提起もあった。今回は駆け足ながら、これらのトピックのうち特筆すべき点を紹介したい。
まずは、子どものいる世帯に対する扶助・加算について行われた議論を紹介する。現在の日本では、子どもの貧困対策が重要かつ喫緊の課題と認識されており、生活保護世帯の子どもたちが成長して生活保護世帯を形成する「貧困の連鎖」も問題視されている。何らかの対策の必要性は、多くの人々が認識している。
ただし今回の基準部会においては、厚労省は「次年度から削減せよ」という意向を明確に示したわけではない。「少し長期の時間をかけて議論してほしい」という意向と、どのようなデータを取得するか・どのような比較を行うかについての叩き台を示しただけだ。
厚労省が作成した資料によると、データ取得と比較においては、児童養育加算においては「一般の夫婦子世帯における生活扶助相当支出額と均衡がとれるものとなっているか」を「子どもの人数別・年齢別に検証」、母子加算においては「一般のひとり親世帯における生活扶助相当支出額と均衡がとれているか」を「子どもの人数別・年齢別、(母親の)就労の状況別に検証」するとしている(資料3ページ)。またそこには、「大人が2人以上の有子世帯の相対的貧困率は12.4%」「ひとり親世帯の相対的貧困率は54.6%」(数値は平成24年国民生活基礎調査による)といった数値も挙げられている。その貧困率、さらにいえば貧困世帯の子どもたちの現在の状況を「改善されるべき問題」としたいのか、それとも「貧困は当たり前なんだからガマンさせるべき」としたいのか、なんとも意図のつかみがたい記述がされている。
しかし厚労省が現在のところ意図しているのは、もちろん削減であろう。資料13ページには、2014年5月30日の財政制度等審議会(財政審)に提出された参考資料からの抜粋がある。そこには、夫婦子1人世帯・ひとり親世帯のいずれにおいても、「生活保護基準額のほうが一般低所得世帯より高い」という結果が示されている。もしもこの比較が妥当なものであるとすれば、一般低所得世帯は生活保護を受給する資格がありながら受給していないことが多いため、子どもを含めて世帯員に対して「健康で文化的な最低限度の生活」ができていない、ということに他ならない。
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