今やセールスフォース・ドット・コムは、グーグルが買収を目論む次の企業との印象が消し切れなくなっている。
「もし、グーグルがエンタープライズ市場で本気でマイクロソフトと闘うつもりなら、セールスフォースを買収する以外にその方法はない」。今年5月、そう明言したのは調査会社451グループである。
そのちょうど1ヵ月前の4月半ば、セールスフォースCEO(最高経営責任者)のマーク・ベニオフとグーグルCEOのエリック・シュミットは、サンフランシスコのホテルで仲良く壇上に並び、セールスフォースのCRM(顧客管理)アプリケーションにGメールやチャット、カレンダーなどの機能を持つグーグル・アップスを統合することを発表したばかりだった。
CRMとは、顧客のデータ管理やマーケティングの自動化、人材の最適化、コミュニティ管理などを総合的に行うアプリケーションで、現在は大小の多くの企業が導入している。
実はグーグルもエンタープライズ市場に進出しているが、その実績はパッとしない。だから、この市場で売り上げを伸ばし続けるセールスフォースのCRMにグーグルの機能を盛り込むことで、エンタープライズ市場に食い込もうと狙ったのが、今回の提携に至った理由だ。
だが、451グループの見方は厳しい。もともとセールスフォースのCRMとグーグル・アップスは無関係なソフト。単なる抱き合わせでは、販売チャネルのインセンティブは高まらない。エンタープライズ市場を本気で動かしたいのならば、セールスフォースそのものを手に入れる以外にはないだろうというわけだ。
その後6月に入って、2社の結びつきをさらに深める動きがあった。セールスフォースのディベロッパーが、グーグルのAPI(アプリケーション・プログラムインターフェイス)にアクセスできるようにしたのだ。否応にも、グーグルがセールスフォースを取り込む一連の動きが着々と進んでいるのではと感じずにはおられない。