日本の代議制民主主義の終焉

 さらに俯瞰すれば、こうした現象は20世紀型の代議制民主主義がある種の“金属疲労”に達したためと見ることもできます。チャーチルはかつて「民主主義は最悪の政治形態と言うことができる。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば」と但し書きで評価していましたが、人口減少・高齢化だけでなく、社会の複雑化、価値観の多様化で利害の錯綜が複雑怪奇になって意思決定が鈍くなる。「歴史の終わり」で知られるフランシス・フクヤマ氏は、米国政府が近年、議会の不毛な対立でデフォルト寸前に陥った事例等から政治制度の衰退を指摘しています。

 パソコンに例えれば古い機種に新しいOSを入れたところで動作処理が追いつかず、機能不全に陥るような状態です。その意味では、統治機構そのものの在り方を21世紀型に改良していくべきなのでしょう。そうなると憲法改正も必要になってきます。日本で旧来型の憲法改正論議といえば、9条を巡る保革の対立でしたが、もはや、安全保障の一分野で済む話ではなくなりつつある。その意味では新しい論憲自体がまず待ち望まれるところです。

 政治に失望するのは簡単です。しかし何も声を上げずに見過ごしていれば、この国のガバナンスの劣化は進んでいく。制度を変えろ、と有権者が政治家のお尻を叩かなければ新しい議論は始まりません。

 政治が衰退し、社会も疲弊し、現実を変えられないことに失望したエリートは日本に嫌気がさして海外に出て行ってしまいます。すでに富裕層はシンガポールに着々と拠点を移し始めています。彼らはビジョンを持った経営者であることも多いので、リーダー型人材の流出は、イコール企業の流出であり、日本の空洞化が進みます。しかし、これも、だれもが質の高い医療を廉価で享受できる日本の医療を守り抜けば、日本を完全に捨てての流出は、一定程度にとどめられると思われます。

 今回の選挙を機に新しい統治機構論、新しい論憲について皆で考えていただければと思います。