地域包括ケアシステムは、厚労省がこの先踏襲すべき高齢者ケアの基本として高らかに掲げた考え方だ。最期まで住み慣れた地域での暮らしをめざす。「治す医療から支える医療へ」の転換を推進、そのために「入院から地域医療への転換」の実現に旗を振っている。

 折角掲げたスローガンを自らの手で踏みにじってはならないはずだ。介護療養病床はあくまで病院である。正式には介護療養型医療施設と呼ぶ。病院での長期入院施策を丁寧に解消していくのが地域包括ケアの実現に向けた採るべき路線だろう。

 介護保険給付費分科会に11月6日に提案した厚労省案は、介護療養病床の存続へ5つの条件を付けた。存続の言い訳めいた5条件だが、地域包括ケアを意識し、せめてもの意地を見せた。

(1)重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者が一定割合以上であること
(2)(経管栄養や痰の吸引など)一定の医療処置を受けている患者が一定割合以上
(3)ターミナルケア(終末期ケア)を受けている患者が一定割合以上
(4)生活機能を維持改善するリハビリを実施している
(5)地域貢献活動を実施している

 この5条件で、「医療ニーズや看取りへの対応が充実した施設として重点的に評価する」としている。5条件をすべて満たす施設を新たに「療養機能強化型介護療養型医療施設」として、従来より高額の報酬を付ける。5条件を満たさない療養病床を引き続き老人保健施設などへの転換を促すが、報酬差で強化型へ誘引していこうという狙いである。現在まで残っている介護療養病床は6万7000床だ。

 しかし、この5条件は実は他の介護保険施設でも目標となるものだ。今では特養でも老健でも入居者の大多数は認知症や複数の疾患を持ち、ターミナルケアは実施され、リハビリも心掛けられている。後期高齢者の症状としては変わりない。新基準を設けて政策の分かりづらさを拡大するのは、もうやめた方がいい。自治体担当者やケアマネジャーを始めとする関係者に複雑な事務作業を強いるだけである。施設の一元化を目指す議論に着手すべきだろう。

経管栄養を受ける人はなんと4割超
意識転換の進まない介護療養病床の現状

 さて、介護療養病床の現状はどのようなものか。まず、特養や老健(老人保健施設)と比べて、圧倒的に医療処置を必要としている入居者が多いのは事実だ。

 厚労省の調べによると、胃瘻や経鼻経管など経管栄養を受けている人が41%もおり、特養や老健の9%前後と大差がある。喀痰吸引も28%で、特養や老健の6%前後より多い。適便(34%)や浣腸(28%)の必要な人も多い。中でも、胃瘻など経管栄養の人は、より医療ケアが必要な医療療養病床でも36%なのに比べても断然多いことは見逃せない。