「老後の医療費が心配だから、終身型の民間医療保険に加入している」という声を耳にする。
病気やケガで入院したときの医療費に備えて、民間の生保会社などが販売する医療保険に加入している人は多い。中でも、ここ数年、人気が高いのは「終身型」の医療保険だ。
終身型の医療保険は、毎月支払う保険料が一定額で値上がりすることがない。支払いの計画が立てやすいということもあるが、何よりもいったん加入すれば「保障が一生涯続く」という安心感が人気を集める理由のようだ。
高齢になるほど病気になる確率は高くなるが、いざ病気になってからでは民間の医療保険には加入できない。こうした保険の商品性もあって、若いうちに一生涯の保障が続く保険に加入しておいて、老後の医療費に備えようと考える人が多いのもわからないでもない。
しかし、先ごろ発表された来年度の医療費の改定内容を見ると、こうした民間の医療保険に入っていても、給付金を受け取る機会はどんどん減っていくのではないかと感じている。
超高齢化社会に対応するために
在宅医療の体制作りが始まった
2010年10月現在、65歳以上の高齢者は過去最高の2958万人。総人口に占める割合も23.1%で、高齢化率も過去最高を更新した。今後ますます高齢者は増えていくが、それに伴い死亡者数も増加する。2010年は年間約120万人だった死亡者数は、2040年には166万人まで増えると推計されている(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」より)。
戦後まもなくの日本では、病院で亡くなる人は1割程度。ほとんどの人が自宅で最期を迎えていた。しかし、高度経済成長とともに自宅で死を迎える人は減っていき、現在は85%の人が病院などの医療機関で亡くなっている。