注文に応じた生産をすることで、デルは中間の流通を省き、より多くの利益を確保し、売上高に対する販売コストの割合を世の中一般の12%からわずか4~6%にまで削減できるようになった。

 この低いコストと大きな利益幅こそが、デルに類まれな成功をもたらした要因だ。創業から最初の8年間で、同社は80%という驚くべき年率で成長した。成長が鈍ったときでさえ、毎年50%以上の成長率を記録している。2000年の半ば時点で、年間の売上高は270億ドルに達した。

転機と決断

 デルの成功を目の当たりにして、その手法をまねようとする者が現れた。コンパック社やゲートウェイ社といった企業が、デルによく似たビジネスモデルを実践している。ところが、このデルの魔法を自分のものにまで消化できるところは1つもなさそうだ。

 「最近は、在庫を圧縮し、注文生産の態勢がとれれば、デルのような経営ができるという考えが流行している。確かにこれはパズルのピースではあるが、このほかにもピースはいろいろある」

と本人は語っている。そして同社の成功を次のように説明する。

 「PC業界で価値を生み出す手法を理解し、対象となるマーケットを見きわめ、明確なビジネスモデルに集中し、そして確実に実行する、という戦略を徹底したからだ」

 デルは単なるダイレクト販売以上の企業を育て上げた。その成功は、顧客との関係とも密接につながっている。自分の会社は製品を販売するだけではなく、顧客の期待にも応えなければならないことを自覚している。デルコンピュータは顧客と交わしているコミュニケーションを、うまく活用している。

 その結果はどうなっているか。強いブランド力、低コストでの新規顧客獲得、そして顧客からの高い信頼だ。デルは顧客の要求をいち早く感じ取ろうという考えから、顧客からのクレームを歓迎している。