同社はかつて広告にこんなコピーを使った。

 「あら探しの好きな方、わがままな方、やっかいな質問をする方に申し上げます。ありがとうございます、これからもそのままで、よろしくご愛顧のほど」

 これと同じようなコピーを出せる自信のある企業は、コンピュータ業界だけに限らず、ほとんど見当たらないだろう。

 テクノロジーに対する生来の鋭い感覚を働かせて、デルはいち早くインターネットの可能性に着目した。わずかなコストで幅広い顧客を獲得することに精力を注ぎながら、すばやくオンラインでの販売体制に移行した。

 「インターネットはわれわれにとって、夢の実現そのものだ」

とデルは言う。

 「変動費がゼロの取引ができる。これよりもすぐれた方法があるとすれば、それはテレパシーだけだろう」

 数字がこの事実を裏づけている。デルは1996年にeコマースを開始した。1997年、同社のオンラインでの売上高は1日あたり300万ドルを超えた。2000年での同じ数字は5000万ドル。同社の売上高の半分にはインターネットがからんでいる。

 戦略についていえば、デルの姿勢は見事というほかはない。2000年を目前にしたころ、業界のあらゆる議論が、PC時代もいよいよ終わりかという話題に集まっていた。アナリストは、消費者の関心はモバイル機器に移ってPCの販売は不振に陥るだろうと予測していた。ニューヨークの投資銀行ジョセフ・ガナー社のチーフストラテジスト、ドナルド・セルキンはデルコンピュータについてこう言った。

 「栄光の時代は終わったと思う。言いたくはないが、過去のテクノロジーだ」