このように、相手の考え方や行動、スタイルを取り入れようとする行為を、心理学では「モデリング」と呼びます。人は、好きな人を見ると、自分もそうなりたいという願望を抱きます。それで、相手と同化したくて、すべてを真似ようとするのです。

 ですから、部下に自分の価値観を受け入れてもらいたければ、部下から尊敬されることが肝心です。そのうえで、自ら行動で示すことです。それによって、異なった価値観を持っていた部下も、その上司の魅力に引っ張られるようにして、価値観を修正していきます。仕事のやり方だけでなく、物腰や立ち振る舞いまで真似ることもあるほどです。

 デール・カーネギーの成功哲学に「成功したければ成功者を真似てみろ」という名言があります。成功者や魅力的な人の考え方や行動は、無意識のうちに真似をしてみたくなります。

 「学ぶ(まなぶ)」の語源は「真似る(まねる)」であると言われます。このことからも、学んでもらうためには、まず真似てもらうことの重要性が分かります。

具体的なデータや事例を示す

 部下の価値観を動かそうとするときは率先垂範が必要であることを述べました。ただし、言葉による指導に意味がないわけではありません。行動で示すとともに、説得力ある言葉で部下に納得してもらうことが肝心です。

 そのためには、なぜその価値観や常識が大切なのかを、上司自身がしっかり理解しておくことです。

 よく「受け売り」の言葉や常識論をやみ雲に部下に伝えている方がいます。「なぜそうなのか」を具体的に伝えないで、「常識だろ」とか「それじゃダメだ」などの曖昧な言葉を連発するだけ。これでは部下は納得しません。

 説得力を持たせるためには、上司自身が意味をよく理解したうえで、部下が納得できるような具体的なデータや事例をできるだけ多く示してあげることです。

 これが、異なる価値観を受け入れてもらうための第2の方法です。

 「行動を改めないと、具体的にどのような不都合があるのか」「こう考えることによって、具体的にどのようなメリットがあるのか」を、事例やデータをできるだけ多く集めて、分かりやすく示すのです。