このような反応は、新入社員に限ったことではありません。上司と部下の関係でもそうですし、お客様との関係でもそうです。

 これは、子供の教育にも同じことが言えます。タバコがいくら良くないと教えても、一部の子供たちは吸います。「タバコは良くない」は常識だからです。「タバコは良くない」ことくらい、パッケージにも印刷されているのです。

 ある父親が、子供の喫煙について相談に来られました。そこで私が「タバコは、なぜ良くないのでしょう?」と質問すると、怪訝そうな顔で「タバコが身体にいいわけないじゃないですか」と答えられたのです。「では、どう身体に悪いのでしょう?」と尋ねると、「ニコチンとタールが悪いのです」と当然といった面持ちで答えられました。私が重ねて「ニコチンとタールはどう身体に悪いのでしょうか?」と質問すると、お父さんは「そこまで詳しくは知りません」としか答えられません。これではダメなのです。

 そこで、お父さんにお願いして、仕事帰りに図書館にしばらく通ってもらいました。タバコが身体に及ぼす悪影響を徹底的に調べてもらったのです。「1日吸うと寿命が何日縮まる」という新聞の切り抜きや、吸い続けた人の肺と吸わない人の肺を比較した写真など数十点の資料が集まりました。それらを紙芝居のようなフリップにして、子供に分かりやすく解説してもらいました。

 その子供は、圧倒的な恐怖のデータに怖じ気づいて、きっぱりとタバコを吸わなくなりました。

 もちろん、子供のために図書館に通い詰めた父親の愛情の威力が大きいのですが、常識だけを叫んでも、人は変わりません。

 部下に影響を与えたければ、部下から好かれるように努力し、自ら行動し、具体的に「なぜこの考え方が正しいのか」を部下に説明できることが必要です。これを意識しておけば、行き当たりばったりで部下に感情をぶつけることが減ります。部下が心から納得できるように準備することを、上司は考えるようになります。その結果として、部下は冷静にこちらの「価値観」や「常識」に耳を傾けるのです。


<今回をもちまして当連載は終了となります。ご愛読いただき、ありがとうございました>