なぜ保険証をすぐもらえないのか?
社員の不安に答えない人事部の怠慢

 企業に入社した際に健康保険証が発行されるタイミングは、入社後1週間から2週間後であることが一般的だ。入社前に企業の人事部が健康保険組合へ手続書類を提出していたとしても、入社日以後にしか健康保険組合での手続きが開始されず、その後、健康保険組合で発行された健康保険証が企業の事業所へ送付され、事業所から本人へ届くというプロセスを経るからだ。

 病気や怪我で通院している社員もいるだろう。通院していないまでも、いつ自分自身や家族が通院せねばならぬかもしれぬと案ずる社員もいるだろう。小さい子どもや老齢の扶養者を抱えた社員であれば、なおさらだ。健康保険証が手元にない状況が、社員に不安を与えている。

 この問題は、健康保険組合における健康保険証発行プロセスそのものを効率化したり利便性を高めたりする観点からも論じられるが、私は、健康保険組合に丸投げで何の工夫もしない人事部の管理型体質に、強い危惧を覚える。極論すれば、この管理型体制こそが、社員の不安を放置し、企業の成長力を妨げ、国の発展のブレーキになっていると言っても、言い過ぎでないと思えるほどにだ。