向かい合う2人の女性写真はイメージです Photo:PIXTA

なぜ他人が評価され、自分は認められないのか……。こうした不満や焦りの感情の背景には、単なる能力差では説明しきれない構造が絡んでいるという。世間の評価に揺れる心との向き合い方を中国古典から学ぶ。※本稿は、文芸翻訳家の伏 怡琳『困ったときは中国古典に聞いてみる』(アルク)の一部を抜粋・編集したものです。

心をむしばむ不安
「世間からの愛」とは?

【お悩み相談】大学を出て今の会社に入り、10年が経ちました。最近、私より明らかに仕事ができない同期入社の人が、私より先に昇進しました。納得できません。悔しいです。私のどこに問題があるのでしょうか。

 大学に勤めている知人が似たようなことを経験しています。

 博士課程を修了後、非常勤講師として大学で働くようになった彼女は、いつも真剣に授業の準備をしており、学生からも好評でした。

 ところが、彼女より後から入ってきた非常勤講師が、指導教授の根回しで常勤講師になったのです。彼女は昇格する機会になかなか恵まれず、悶々としていました。そんな中、久しぶりに彼女に会いましたが、話すうちに彼女は思わず愚痴をこぼしました。その憤慨ぶりは大変なものです。

 顔を真っ赤にして怒っている知人を見ていたら、若い頃に読んだ本が頭に浮かびました。

 哲学者でベストセラー作家でもあるアラン・ド・ボトン(*注1)が書いた『もうひとつの愛を哲学する―ステイタスの不安―』という本です。

*注1…アラン・ド・ボトン:1969年、スイス生まれ、イギリス在住の哲学者、作家。哲学的な思索を、恋愛、仕事、旅行など日常生活の身近なテーマと結びつけて論じる。