中国と韓国が11月に実質的に妥結した自由貿易協定(FTA)の日本への影響が明らかになった。関税削減などで、中韓両国の市場で日本製の液晶パネルなどが不利になり、日本からの輸出額が20年後、年間77億ドル(約9240億円)減る見通しだ。

FTA交渉の実質妥結を確認した11月の中韓首脳会談。日中韓FTA交渉より中韓が先行したことで、日本が不利になる恐れもある
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 影響試算は、亜細亜大学の奥田聡教授が、過去に行った中韓FTAの試算(財務省財務総合政策研究所編著『日本の国際競争力』に収録)を更新する形で行った。

 具体的には、韓国政府が発表した、(1)同FTAで中国に支払う関税を節約できる額(関税の撤廃や削減が完了する20年後に54億ドル)、(2)発効後、5年ごとに関税を下げる品目がそれぞれ何割あるか──などを踏まえ、再計算した。

 その結果、日本への影響は、協定発効の翌年の中韓両国への輸出減少額が18億ドル。20年後には、対韓輸出が9億ドル、対中輸出が68億ドル減ることが分かった。

 中国と韓国は互いの国内産業への影響が大きい自動車などを協定から除外。さらに、関税を撤廃する品目の割合が9割と比較的、少ないため、日本国内では「危機感はない」(経済団体幹部)などと静観する関係者が多い。

 だが、ディスプレイの部品、リチウムイオン電池、自動車の車体部品などは、一定の猶予期間を置いて関税が削減され、日本製品が不利になる見込み。自由化のスピードが遅いため短期的な影響は軽微だが、20年後には他国間の経済連携の中でも最大級のインパクトを受けることになる。